苦役列車 書評|西村 賢太(新潮文庫)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
2017年11月20日

おちのない現実にある日々は、私たちが毎日歩んでいるものと全く同じ
第144回芥川賞受賞 西村賢太著「苦役列車」(2010年)

苦役列車
著 者:西村 賢太
出版社:新潮文庫
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苦役列車(西村 賢太)新潮文庫
苦役列車
西村 賢太
新潮文庫
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『新潮』2010年12月号に掲載された、第144回芥川賞受賞作品。

犯罪者の父を持ち、肉体労働の荷物役の日雇い仕事を続けるなんも取り柄のない中卒の主人公北野貴多19歳。港湾の仕事先で日下部正二と仲良くなり、女友達を紹介してもらうが、暴言を吐き関係が崩れてしまう。さらに上司とささいなことで喧嘩をし、会社での居場所もなくなってしまう。

本を閉じたとき、いつものような読み終えた感じがなかった。おちがないのだ。正直物語のどこに面白さがあるのかわからなかった。しかし、著者・西村賢太について調べてみると、著者自身犯罪者の父を持ち、成績も悪く中卒で、港湾の肉体労働で生計を立てていたそうだ。この物語と作者の経歴が似ている。そして、この小説は「私小説」と呼ばれているらしい。私小説は初めて聞いた言葉だった。

私小説とは、著者の体験を元につくられた小説のことで、代表的な作家は、芥川龍之介、藤澤清造、石原慎太郎などが挙げられる。西村賢太もその一人だ。特に藤澤清造は、著者がもっとも影響をうけた作家であり、短編集の編集をしたり、『根津権現裏』の解説を担当している。さらに、表紙のイラストまで藤澤清造の作品と似ている気がする。

普段SF、ミステリーなどを読んでいる私にとってはこの私小説は新境地ともいえる。これを知り、話の面白さがようやくわかった……。くだらない日常や、ダメ男のダメな日常……おちのない現実にある日々は、私たちが毎日歩んでいるものと全く同じものだ。

つらい日や怒った日、この『苦役列車』はそんな暗い部分が多い。普通の小説では見ることのできない著者の私生活を見ることができる。それが私小説の面白さなのだ。

私小説ならば、著者の仕事はこの『苦役』と表現されるようにそれほど辛いものなのか。日雇い労働者とは何なのか。気になったので調べてみると、日雇いで働く人は、大体がホームレスと呼ばれる高齢者、すぐにお金が必要な人、環境・条件があわず行き場がない人達だ。

特に東京の山谷では簡易宿泊施設が多くあったため、かつて日雇い労働者が集まっていたらしい。仕事内容は、肉体労働が多いが、給料は安く、キャリアも得ることができないため貧困の原因として社会問題にもなった。そんな仕事を筆者は、体験してしたのか……と思う。

調べていくうちに、深さがどんどん増していき、これまでとは違う小説の面白さが見つけ出せた作品だった。


【おまけ】
「『苦役列車』ということで、新橋のSL広場に来ました。」
この記事の中でご紹介した本
苦役列車/新潮文庫
苦役列車
著 者:西村 賢太
出版社:新潮文庫
以下のオンライン書店でご購入できます
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