森 栄喜・長島有里枝トークイベント載録 森 栄喜『Family Regained』をめぐって|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
2017年11月29日

森 栄喜・長島有里枝トークイベント載録
森 栄喜『Family Regained』をめぐって

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血液を思わせるような鮮烈な赤い色に染まる家族写真の中に、写真家自身が入り込むことで、普遍的なものと思われていることへの揺らぎを生み出すような、森栄喜氏の新作『Family Regained』の発表と、同名写真集の刊行(ナナロク社・A4横・スリーブ付・92頁・4500円、12月20日刊行予定)を機に、森氏と長島有里枝氏(恵比寿写真美術館にて11月26日まで「長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」が開催中)のトークイベントが恵比寿のナディッフ アパートで10月19日に行われた。この模様を載録する。 (編集部)
第1回
血の赤、自由の赤、革命の赤

森 栄喜氏
森 
 今回の『Family Regained』は、2013年度の木村伊兵衛賞を受賞した『intimacy』を作っている頃から撮っていたもので、関東と地元の金沢、それと関西の友人たちや同級生の家族を中心に40組の家族を2年ほどかけて撮ったものです。これらはすべて赤いポートレートの写真群で、全部セルフタイマーで撮っているんですけど、ここに写っている僕以外の、家族や恋人や友だちといった人たちは、みんな本当の繋がりがある人たちで、そこに僕がその人たちの衣服、たとえばお父さんのシャツやパンツを借りて紛れ込むというか、家族の一員のように一緒に写り込むというプロジェクトなんです。それで、いくら友だちの家族で家族の服を借りて紛れ込んだとしても、何かしら違和感というか異質感があるんですね。あと、大人たちは自然な表情をしているんだけど、子供はやっぱりちょっと体が強張っているとか、そういう揺らぎというか摩擦みたいなものも含めて撮影しました。よく見るとパパが二人いるとか、構成も何か見慣れない集団になっていてちょっと違和感がある。でもずっと見ていると、こういう集団もいそうだとか、楽しそうだとか思えるようにだんだん慣れてくるし、この赤い色も慣れてくれば、刺激や攻撃性のある赤というよりも、馴染んで包み込むような赤に思えてくるんじゃないかなって。慣れというのか可視化というのか、初めは見たことがないからちょっと抵抗があるだろうと思うんだけど、赤い色も、あれ? と思うような家族の構成とかも、見慣れていくうちに普通に幸せそうな家族の集団だと感じてもらえたらいいなと。5年とか10年先は、もしかしたらそういう社会になっているかもしれないし、既に海外ではそうなっている国も多い。問いかけというか、この先みんながそう思ってくれるような社会になっていたらいいなという願いを込めてやっていました。
長島 
 なぜ赤だったんでしょうか。
森 
 初めの頃、家族という言葉から思い描くもののリストを作ったんですね。その中に「血の繋がり」みたいなものがやっぱりあったんです。本当の家族じゃないけど、家族のように写真の中で存在させるプロジェクトだから、家族に見える要素を最大限やろうと思って、服を借りたりポーズや立ち位置もそう見えるようにしたりして、自分が家族というものにその時思い描いていた要素を全て注ぎ込もうとしたんですね。それで写真の色も「血の繋がり」ということで赤にしたんです。でも撮影していくうちに、それは自分の思い込みで、血が繋がっていない家族だってたくさんいるし、夫婦だって元々は血がつながってないしと気がついて。
長島 
 どこかで「自由の赤」とも書いていませんでしたか。
森 
 それもありますね。今ももちろんそうだけど、一昔前は男同士で子どもを育てるなんて想像すらできない世代っていたわけじゃないですか。僕だって、想像はできるけど実現はできないかもみたいに思うことはありますが、かつては思うことすらできなかった。そういう人たちの叫びというか思いみたいなものを、代弁したいというような使命感もあります。そういう赤でもありますね。
長島 
 革命の色というイメージもあるんですよ。
森 
 そうですね。声を上げる色かもしれませんね。「赤」という色に敏感に反応する有里枝さんはやっぱり革命家だからかも(笑)。

2017年11月24日 新聞掲載(第3216号)
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