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2017年11月28日

料理研究家・谷島せい子さん(下)

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谷島せいこさんは愛犬ローリーといつも一緒
谷島せい子さんは、年を重ねるほどに新しいジャンルを切り開き、それまでの料理研究家としての仕事以外に、シニア世代のお手本のような存在として、そのライフスタイルを雑誌、新聞、TVで紹介している。

きっかけになったのは、六〇代でたて続けに出版した『女は60歳からが一番!いくつになっても退屈しない暮らし方』と『60代、今が一番、シングルライフ』(共に講談社)だと私は思っている。愛犬ローリーとの衣食住にまつわる工夫ある暮らしぶりが描かれた、これらの本をきっかけにして、TV出演も多くなっていった。そしてたとえば、谷島さんがデザインしたエプロンが書籍で紹介されるや否や、「私も欲しい!」という問い合わせが続出。

いつお会いしてもセンスのあるおしゃれな装いもさることながら、マンションの一室を居心地よく、ベランダまでツタの絡まるミニガーデンにしている様子は、「ひとり暮らしでもここまで楽しめるんだ!」と大いに勇気づけられた。散歩の途中で拾った枯れ葉や小枝を使って雑貨を手作りしたり、古い服をリフォームするなど、どんなことにも気軽に挑戦している様子は、生活の一つ一つを心から味わっているように見えた。

そんな谷島さんが、今七〇代を目前にして「これからどうする? どう暮らす?」と何度も自問自答しているという。「私は二十五年周期でモノを考えているところがあって、五〇歳から七十五歳までどう生きたら自分らしくいられるかと思うと、あと五年がとても大事な時間に思えてくるんです。もちろん仕事は大好きだからできる限りやっていきたいけど、無理はしたくない。人は死ぬときが自分ではわからないから、いつも悩み、迷うんでしょうね」

実母をこのマンションに引き取り、四年間の介護経験の末、看取ったことも、自分の行く末と重なる、とても大きな経験だったという。車椅子の母の膝にちょこんと乗っていた愛犬ローリーも、十歳になった。今やペットの域をはるかに超え、相棒と呼ぶにふさわしい存在。でもいつまで一緒に過ごせるかはわからない。自分自身と向き合いながら、納得のいく始末の付け方を、日々、谷島さんは真剣に考えている。

「キャビネットの中は器でいっぱい。まずはこの中を片付けることから始めようかしら」と谷島さん。今までずっと続けてきた料理教室の生徒さんを増やさず、徐々に規模を小さくしていくならば、器もそんなには必要ない。歳と共に衰えゆく体力を見据えながら、家の中で快適に過ごすための工夫を、一つ一つ洗い出している。

自分自身のこれからの活かし方を、さまざまな方向にアンテナを張り、模索する谷島さん。「若い人たちに私が得てきたものを伝えていくことも大切な役割。最後に世の中にお礼をしてお返ししたいと思っています」
最新刊二冊も保存食がテーマ
“人生一〇〇年”と言われる時代が、遂にやってきた。あと五年、七十五歳になったとき、谷島さんは次の二十五年を、どうとらえるのだろう。

これまで健康でいることを何よりも大切にしてきた谷島さんは、日々の食事を楽しく、丁寧に実践することを提案してきた。ひとりだと食べきれないから、保存食にして無駄なくいただく。その姿勢を徹底して貫いた食へのこだわり。

未知の世界は、素敵な先輩の処し方を見つめ、手探りしながら進んでいくのだろうか?いやいや、それは谷島さんには似合わない。

谷島さんはきっと、なにか新しい次のステージを見つけて、背筋を伸ばして立っているように思えてならない。なぜなら谷島せい子さんのエネルギーは、人並みの強さではないから。人生の扉をひとつひとつ開けてきたその知恵と工夫で、団塊世代のリーダーとして、次に続く世代にしなやかでたくましい後姿を見せてほしいと願わずにはいられない。(おわり)
2017年11月24日 新聞掲載(第3216号)
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