連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(33)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年11月28日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(33)

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アンドレ・テシネ(右)とドゥーシェ
JD 
 中国映画を考える際に、非常に単純な理由ですが、中国の現実の社会における食事とは、とても重要なものであるということです。そして、日本、中国、フランスが、食事の風景の出てくる作品を作っていたことには理由がないわけではありません。そのような国々には確かに優れた料理が存在しています。食べられないような代物はない。食材を考えてみても、中国には非常に美味しいものがあります。日本も同様です。当然フランスにも優れた食材があります。そして、イタリアです。イタリア映画においても、確かに食事の光景は出てきました。レストランや食堂での食事の光景は、多くの作品で見られます。加えて重要だったのは、料理をする女性の存在でした。ロッセリーニの作品ですら、食事の光景はありました。フェリーニは言うに及びません。スコラもリージの作品にも不可欠でした。そして、ヴィスコンティですね。『山猫』の食事は、非常に重要な転換点として表現されています。貴族の時代の終わりが、食事をきっかけにして描かれています。他にも『地獄に落ちた勇者ども』や『ヴェニスに死す』でも食事が、作品の一部として重要な位置を占めています。ヴィスコンティの映画における食事とは、何かしらの出来事や劇的機能と切り離せないものです。しかし同時に、個人の生き方や社会のしきたりとも非常に強い結びつきがあります。個人の生き方と社会のしきたりが食事を通じて表現されるというのは、ヴィスコンティに限ったことではありません。日本、中国、フランス、イタリアといった国々の作家にも言えることです。

その反面、あまり食文化の発展しなかった国においては、食事を見せることはできません。代わりに、空腹である人々を見せます。食事をすることはありません。同じ方法で「食」を取り扱うことはできないのです。
HK 
 近年のイタリア映画においても、「食」を取り扱うことはあまりありませんね。しかし、イタリアのレストランで食事をすると、今でも若者からお年寄りまで、食事をしている光景をよく見かけます。食文化は、確かに引き継がれている印象があります。
JD 
 そもそも、イタリアにはヴィスコンティやフェリーニに匹敵するような作家がもういません(笑)。
HK 
 確かに(笑)。さて、アメリカ映画と食事についてはどのように捉えていますか。印象的な食事の光景はあまりなかったような気がします。
JD 
 アメリカ映画においては「食」の捉え方が、フランスや日本とは大きく異なります。第一にアメリカにとって、食事とはさほど重要な要素ではありません。食事は儀礼ではない。生きるために必要なだけです。だから、食べます。食事の光景のあるアメリカ映画は確かにあります。しかし、その食事とは、何かしらのアクションを起こすきっかけに過ぎません。アメリカ映画の食事とは、アクションの一部です。
HK 
 アメリカ映画においては、食事だけでなく多くのことがアクションの一部をなす。「アメリカ映画とはアクションである」と、ドゥーシェさんはよく言っていますよね。
JD 
 その通り。食事とアクションは共存しています。アメリカ映画における食事とは、第一に金銭の問題と関わってきます。金持ちが出てくる映画を見れば、確かに食事の光景を見ることができます。
HK 
 レオ・マッケリーなどの映画に出てきますね。でも、笑いを起こすための一要素でしかない。
JD 
 そうです。そして金持ちが出てくる映画と対比するようにして、お金持ちではない人々が出てくる映画があります。例えばウエスタンにおける食事を考えてみてください。もちろん料理をする風景は出てきます。キャンプの場には、沸騰する鍋があるはずです。しかし、その鍋は最終的に誰かによって撃たれ、ひっくり返されなければいけません。これがアメリカ映画における「食」です。
HK 
 フランスやイタリアとは異なった「食」の美学があるということですね。ひっくり返る鍋の美学とでも言いましょうか。アクションのための美学です。

<次号につづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
2017年11月24日 新聞掲載(第3216号)
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