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2017年12月1日

第26回 山本七平賞 贈賞式

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十一月二十一日、東京・日比谷の帝国ホテルで第二十六回山本七平賞の贈賞式が行われた。今回の本賞受賞は該当作なし、奨励賞は岩井秀一郎著『多田駿伝 「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念』(小学館)に贈られた。

選考委員を代表して中西輝政氏(京都大学名誉教授)は「本書の主人公の多田駿は日中戦争の発端となった盧溝橋事件の直後から一年余り日本陸軍の中枢である参謀本部の次長を務め、実質は最高責任者の地位にあった人物です。徹頭徹尾、事変の不拡大を唱え、早期の日中和平のために奔走しました。結局は戦争拡大派に押し切られてしまいます。これは昭和史の大きな岐路でした。本書の帯には〈戦後日本人はなぜこの男の存在を忘れてしまったのか〉とあります。やり尽くされた観のあった戦後の昭和史研究の中にも見過ごされてきた大テーマがあった。評伝としても魅力ある作品に仕上がり、バランスの取れた歴史観、巧みな叙述の運び、多田の滋味溢れる人間性が描き出されている点を評価しました。大型新人の登場として今後の活躍を期待する」と選評を述べた。
岩井 秀一郎氏
受賞者の岩井氏は「多田駿は一般的には知られていない人物です。実際に調べてみると、パズルのピースを集めるように資料を漁り、少しずつ輪郭を作り上げていくしかありませんでした。少しずつ多田駿という人物がわかってくるにつれ、自分の予想以上に深みのある人間的な陸軍軍人であることがわかりました。多田駿の、そして日本のターニングポイントであった昭和十三年一月十五日の大本営政府連絡会議で近衛文麿首相らは蒋介石との和平への契りを主張しました。これに真っ向から反対したのが多田でした。この一場面は私に大きなイメージの転換を迫りました。山本七平先生の著書の中で多田のことを「立派だった」と評しています。そして「その参謀次長の口を封じたことが日本を破滅させたのではないか」とまで言っておられます。既に四〇年以上前に問題の本質を見抜いておられたわけです。今回山本先生の名前を冠した賞をいただいたことはとてもうれしいと同時に、半端なものは書けないと改めて身が引き締まる思いです」と喜びとこれからの決意を語った。

この記事の中でご紹介した本
多田駿伝: 「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念/小学館
多田駿伝: 「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念
著 者:岩井 秀一郎
出版社:小学館
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月1日 新聞掲載(第3217号)
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