吉岡太朗『ひだりききの機械』(2015) お客様がおかけになった番号はいま草原をあるいています|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年12月5日

お客様がおかけになった番号はいま草原をあるいています
吉岡太朗『ひだりききの機械』(2015)

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「おかけになった電話番号は現在使われておりません」という、誰もが聞いたことがあるだろうお決まりのアナウンスをもじった一首。SF/ファンタジー的な発想を多数盛り込んだ作風の歌人だけに、単なるジョークでは終わらせず、超現実的な空想世界へと読者をいざなってくれる壮大な歌となっている。誰もがあの機械的で冷たいアナウンスの声で脳内再生してしまうからこそ、ファンタジーとのぶつかり合いが不思議な面白さを生むのである。

「番号」という抽象的存在が草原をあるいているとは、いったいどのようなビジュアルなのだろうか。私は090ではじまる数字が、大きな人型を形成してゆらゆらとあるいてゆくさまをイメージしてしまった。おそらく子どもの頃に見た特撮ものに、緑色の数字や文字などが人間のかたちをなしているというCGのシーンがあったことが無意識に影響しているのではないかと思う。「あるく番号」のイメージは読者の胸の数だけ形作られてゆくだろう。

それにしても、人間同士をつなげることを拒否して草原へと逃げ込むことになった「番号」は、いったいどこへと向かうのだろう。広々とした草原にいても、「番号」の未来は明るいものだとは感じられない。それでも、逃げ出さなくてはならなかった理由があるのだ。風が吹き抜けるような開放感のある歌いぶりと反して、そこに描かれている世界は重く悲しいものに思えてならない。

この記事の中でご紹介した本
ひだりききの機械/短歌研究社
ひだりききの機械
著 者:吉岡 太朗
出版社:短歌研究社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月1日 新聞掲載(第3217号)
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