『不寛容という不安』(彩流社)刊行記念トークイベント載録 『分断と孤立を終わらせるには?』 真鍋厚×宮台真司|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
2017年12月3日

『不寛容という不安』(彩流社)刊行記念トークイベント載録
『分断と孤立を終わらせるには?』
真鍋厚×宮台真司

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不寛容という不安(真鍋 厚)彩流社
不寛容という不安
真鍋 厚
彩流社
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欧米で頻発するテロ事件、ミャンマー政府によるロヒンギャ族の弾圧、そして日本では終わることのないヘイトスピーチの連鎖……。日夜報道される解決の糸口が見えないニュースが人々に重くのしかかる。

なぜこんなに生きづらい時代になってしまったのか。現代の私たちの「不安」と「憂鬱」の正体がどのように形成されたのか、「テロリズム」、「ヴァンダリズム(文化破壊運動)」、「文化的不寛容」等を歴史的過程から掘り起こしていく『不寛容という不安』が彩流社から刊行された。

本書著者の真鍋厚氏と社会学者の宮台真司氏が十一月十三日、東京堂書店神田神保町店で「分断と孤立を終わらせるには?」と題したトークイベントを開催。

本書の要点を章毎に読み解きながら、不寛容という不安に覆われた社会を克服する方法を探った二人のトークから、特にキーとなる第二章、第四章、第六章、エピローグについて語った内容を一部載録した。

(編集部)
第1回
ISの存在が我々の社会に突きつけるもの

宮台 
 僕は本書の帯文を書きましたが、本の全体を反映させようとして、情報量が膨大なので苦労し、「テロの戦いというが、テロリストと我々は区別できない」というエッセンスを取り出しました。今日は全八章からなる本書の要点を各章ごとに押さえてトークしつつ、不寛容さに覆われた昨今の社会を克服する方途を考えてみます。

第二章「すべての歴史は修正(リヴィジョン)を免れない」で書かれた内容をご紹介いただけますか?
真鍋 
 まずこの章で触れた明治維新直後の日本で起きた廃仏毀釈運動では、どういった排除が具体的に行われたのか、あるいは国内のキリスト教徒に対する度し難い弾圧の事実をみなさんに知っていただきたかった。そのために導入の見出しを「近代日本は「イスラーム国」だった?」といささか刺激的な題をつけています。

ではなぜ、国家規模でこのような暴力的な行為がなされたのか。明治政府は旧態の幕藩体制を一新するために、古代史上に存在した、天皇を戴く神聖国家を現代に蘇らせようとしました。その過程で生じた社会の軋轢が一つの要因なんです。
宮台 
 この章に限らず、聖なるものを掲げて統治を正当化するシオクラシー的要素がどんな国民国家にも不可欠で、それゆえに国民国家にとって、事実の粉飾や、聖性が正当化する暴力が、不可欠になると書かれています。見ず知らずの人を「仲間」と思うには、事実を超えた聖なる物語とそれに基づく行動が必要です。かつての枢軸国だけでなく、連合国=市民革命側であれ、自らは他よりも尊いものに属するとの観点に立ち、異分子を排除・搾取してきた。それが植民地支配でした
真鍋 
 私はこういった国家ぐるみの排斥の歴史を、ISが行っている宗教的不寛容さを背景にした暴力と結びつけました。彼らが現に行っている組織的な暴力行為は、私たちと違う世界の話として片付けられないのではないでしょうか。
宮台 
 真鍋さんの直裁な物言いを噛み砕くと、遊動集団では一五〇人が仲間の上限数、定住集団では匿名性が生じない上限が二万人なので、数百万から数億人規模の国民国家は仲間じゃあり得ない。ゆえに「歴史=聖なる物語」の共有による粉飾と隠蔽が必要になる。それは「史実」を裏付けとした壮大な聖なる物語の形をとる。聖なる物語が国家に所属する意味を見出させ、仲間意識を喚起させる。それを自覚する統治権力は、近代以降も、国家正史の創作を、史実に脚色を粉飾しつつやってきたのだ、と。
真鍋 
 ISもバックボーンとなる歴史を重要視しながら、神聖なる物語を作り上げて賛同者を募っていましたね。
宮台 
 だから、この章を読むと、ISと僕らが実によく似る事実を思い知らされます。彼らがここ数年行なってきた国作りにおける暴力とその正当化は、僕らの国家がやってきたことのトレースです。
真鍋 
 彼らの存在は我々の過ちの記憶のプレイバックであり未来にも繋がる問題であるとの示唆なんです。

この記事の中でご紹介した本
不寛容という不安/彩流社
不寛容という不安
著 者:真鍋 厚
出版社:彩流社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月1日 新聞掲載(第3217号)
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