連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(34)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年12月5日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(34)

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取材を受けるドゥーシェ(左端、ひとりおいて)ニコラ・プティオ(シネマテーク・ブルゴーニュ館長)

JD 
 アクションによる「食」、それがアメリカ映画のひとつの特徴です。イギリス映画についても付け加えましょう。イギリス人の作家たちは、イギリスの食事を見せるということに関して非常に慎重だったと思います。映画の中で、イギリスの食事を見せるようなことはしなかった。見せないほうがいい、ということをわかっていたのではないでしょうか(笑)。
HK 
 イギリス映画における食事というと、アラン・クラークの『スカム』が思い出されます。少年院の中の不味そうな食事です。少年院での生活描写の一部として、食事のシーンは繰り返し出てくるのですが、登場人物たちは毎度何かしらの不満があります。最終的に、食事の乗ったプレートは、受刑者たちの積もり積もった怒りが噴出するきっかけとなり、壁へと叩きつけられ、あちらこちらへと投げ飛ばされます。これも「食」が一種のアクションを起こすきっかけでしたね。
JD 
 それもイギリス映画における食事です(笑)。
HK 
 これまでの話の中で、様々な国の文化と映画の関係について詳しく触れられてきました。しかし一方で、一つの国の文化の枠組みでは語りきれないような作家がいます。例えば、第二次世界大戦前のドイツを代表する作家たちは、ナチスの支配が強まってくるにつれアメリカに亡命し、後にハリウッドを代表する作家になっていきます。そのような国境を横断する映画作家については、どうお考えですか。
JD 
 いずれにせよ、問われているのは文化の問題です。西洋という文化を、とりわけヨーロッパの西の文化を考えると、多くの類似性があります。確かに、フランスやイタリアとは異なる文化がドイツにはあります。各々が自国の文化を持っています。思考の形態も異なったものです。そして、とりわけ生き方の違いがあります。しかし、共通するものが西ヨーロッパの文化の奥底には、確実に存在しています。フリッツ・ラングやムルナウ、ルビッチのようなアメリカに渡ったドイツ人の映画作家たちが、異なる国の精神に順応するのは難しいことではありませんでした。ドイツとアメリカの間にも、類似性のようなものは存在しています。
HK 
 それでもドイツ映画の理念のようなものを引き継いでいたのではないですか。
JD 
 その通り。もともと持っていた理念のようなものは常に引き継がれます。例えばアメリカにおけるムルナウやラングを考えてみてください。何かしらドイツ映画的なものが残っています。それでも、完全にアメリカ映画になっている。他の多くの作家たちにも同じことが言えるはずです。アメリカ映画とはアクションです。これは芸術の世界に新しく現れた表現方法でした。そのため、多くの作家たちが自分たちの手で、アクションとは何かを探求することができたのです。多くのヨーロッパの作家がアメリカに渡り、アメリカでのキャリアを積み上げていけたのには理由があります。それぞれの国で育まれてきた考え方の中から、様々なアメリカ映画を生み出すことができたのです。そして彼らは、自らの国家が持つ気質のようなものを残したまま、アメリカを代表する作家になりました。これは当たり前のこととも言えます。

しかし、その一方で、他の文化に順応しづらい文化というのも確かにあります。フランスは、ヨーロッパの中でも特筆する独特の文化があります。そのため、外国で映画作家になるということに関しては大きな困難があります。
HK 
 例えばジャン・ルノワールですね。
JD 
 作品の出来はともかく、アメリカ時代のルノワールの映画は、興行的な成功に恵まれることはありませんでした。外国人になりきれるフランス人というのは、本当にわずかなのだと思います。
HK 
 ジャック・ターナーはいかがですか。
JD 
 ターナーの作品は確かにアメリカ映画に順応しています。というのも、父親であるモーリス・ターナーが、アメリカに渡り映画を撮り始めたこともあって、ジャック・ターナーも非常に若くしてアメリカに移り住むことになります。青年期をアメリカで過ごした後に、フランスに戻り映画を撮り始めます。

<次号につづく>

〔聞き手・写真=久保宏樹〕

2017年12月1日 新聞掲載(第3217号)
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