連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(35)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年12月12日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(35)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ドゥーシェ(右)とグザビエ・ボーヴォワ
HK 
 ジャック・ターナーは、結局フランスでは、作品をほとんど撮っていませんね。
JD 
 ターナーはフランスで四本の作品を撮っています。しかし、すでにアメリカ映画のようなところが少なからず見えます。だから、アメリカに順応するということは簡単なことです。ターナーの作品を見て、それがフランスの映画であると、すぐに認めるのは難しいことです。アメリカの影響が強く出ていますから。他のフランス人作家たちには見られないことです。

その一方で、フランスの今日の映画を考えると、バルベ・シュロデール(=バーベット・シュローダー)のような多くの文化的背景を持った作家がいます。彼はドイツ系スイス人です。しかし、テヘランで生まれ、コロンビアで育っています。ですから、ドイツ系コロンビア人でもあります。そして、彼はフランスに住み、アメリカにも住んでいました。結果として、どの国でも映画を作ることができる作家になりました。日本においてさえ、映画を撮りあげています。『陰獣』を日本映画だということはできません。作品の大部分は日本が舞台ですが、日本人の作家が撮ったものだとは言えません。しかし、それでも日本映画の何かが作品の中に存在しています。
HK 
 彼はいつも「バルベ・シュロデール」の映画を撮りますよね。
JD 
 まさしくその通りです。彼は彼自身に非常に忠実です。バルベ・シュロデールという国籍を持っているのだと思います(笑)。
HK 
 アフリカの奥地やイビサ島で撮影しても、またはチンパンジーやイディ・アミンを相手にしても、ブレない姿勢は凄まじいと思います。
JD 
 それだから、バルベの映画は面白いのです。

フランス人の多くの作家たちが、外国で映画作家になること、要するに、その国の映画に順応するのには大きな困難が伴うのは事実です。一方で、今までの映画の歴史の中で、外国で映画作家になれたフランス人もいたのではないでしょうか。しかし、偉大なフランスの映画作家たちは、そうはいかなかった。グレミヨンの映画は、外国では興業的にも作品的にも上手くいくことはありませんでした。ベッケルも同様です。ヌーヴェルヴァーグの作家でさえ外国で映画を作れたとは言えません。偉大な作家には難しいことだったのです。
HK 
 仏語圏の作家では、ベルギーのシャンタル・アケルマンも、外国に順応することはできませんでした。ニューヨークの街を撮影し、その映像のオフの音声としてベルギーの母親からの手紙を淡々と読み上げた『家からの手紙』や、ニューヨークのユダヤ系移民たちを取り扱った『アメリカンストーリーズ/食事・家族・哲学』のような優れた作品がありますが、アメリカ映画とは言えないと思います。『カウチ・イン・ニューヨーク』という90年代のアメリカのラブコメのコードに忠実な作品も撮っていますが、彼女の代表作ではあり得ません。

フランスの作家が外国の映画に溶け込むのが難しいようにして、外国の作家も、フランス映画に順応するということには困難を覚えるのではないでしょうか。
JD 
 フランスで本当に映画のキャリアを積み上げるということに関しては、その通りです。
HK 
 おそらくマックス・オフュルスだけではないですか。
JD 
 オフュルスは、根本的なところで、ドイツとフランスの二つの文化に理解を示していました。だからこそ、フランス映画にも非常によく順応することができました。フランスで映画に馴染めたようにして、アメリカ映画も撮りあげてはいますが、フランスでの作品ほどには良いものではありません。フランスからアメリカに渡った後に、オフュルスは最後フランスに戻ってきます。アメリカでは多くの困難があったようです。他のドイツの作家たちを見てみると、確かにアメリカでアメリカ映画の巨匠になっています。アメリカのオフュルスには『忘れじの面影』のような傑作もありますが、アメリカ映画を作っていたとは言えません。 〈次号へつづく〉

〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
2017年12月8日 新聞掲載(第3218号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ジャン・ドゥーシェ 氏の関連記事
久保 宏樹 氏の関連記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」のその他の記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」をもっと見る >
芸術・娯楽 > 映画関連記事
映画の関連記事をもっと見る >