第39回サントリー学芸賞 贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年12月15日

第39回サントリー学芸賞 贈呈式

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前列左から伊藤、宮下、1人おいて加藤、金子氏、後列左から遠藤、福間、左地、前田氏
十二月十一日、第三十九回サントリー学芸賞の贈呈式が、東京都千代田区のホテルニューオータニで行われた。
【政治・経済部門】は、伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社)、宮下雄一郎『フランス再興と国際秩序の構想 第二次世界大戦期の政治と外交』(勁草書房)に決まった。伊藤氏は、数式を用いた経済現象の理論分析ではなく、現実社会の「実証分析」を行うため、自治体や霞が関、企業など日本中を回った過去に、データ分析の考え方が浸透していないことに気づいた。数式を使わず、誰にでもわかりやすく分析の考え方を説明できる本を書きたいという思いが、本書執筆の契機となったと話した。

宮下氏は、一時史料を用いて史実を探求し、歴史学の方法論をとる一方、例えば戦争について論じるときに政治的な側面に重点を置くなど「今後も歴史学と政治学、二つの方法論を大切にしながら研究していきたい」と抱負を述べた。
【芸術・文学部門】は、加藤耕一『時がつくる建築リノベーションの西洋建築史』(東京大学出版会)、金子遊『映像の境域アートフィルム/ワールドシネマ』(森話社)が受賞。加藤氏は、ヨーロッパの建築の歴史を専門にしているが、執筆の背景には、新国立競技場や築地市場の移転など、現代の社会問題があったと話した。社会は大きな変動の時代を迎えているが、未だに二〇世紀的な常識や価値観でものを考えがちである。「二〇世紀的な価値観、建築観から、いかに脱却できるかを考えました」

金子氏は、今後も映像を撮りながら様々な地域でフィールドワークを行うこと、「国家とは共同幻想ですから、私は例えば、島尾敏雄さんが“ヤポネシア”と呼んだ、日本列島の辺境に入って行って、そこにある文学や映画、アート、あるがままの現実を、文化批評を通して本にしていきたい」と語った。
【社会・風俗部門】は、遠藤正敬『戸籍と無戸籍 「日本人」の輪郭』(人文書院)、福間良明『「働く青年」と教養の戦後史 「人生雑誌」と読者のゆくえ』(筑摩書房)。
遠藤氏は「今こうして皆様の目の前に立っておりますわたくしは、遠藤正敬本人ですけれども、本人である証明をするために、戸籍の提示は必要でしょうか。自分が何者であるのか、日本人とは誰なのか、それをいかに証明するのか、突き詰めるほど、様々な疑問や不安が湧いてくるものです。そうした人心の動揺に付け込んだのが私の研究であります」と語り出し、会場の笑いを誘った。

福間氏は、戦後の人生雑誌、勤労青年向けの教養誌を扱った意義について、「義務教育を終えてすぐ働き出した勤労青年が、人文雑誌を多く手にしていたのはなぜか。よくもわるくも経済格差が、知的な文化を生み出していた事実をとらえ返すことにつながると感じた」と話した。
【思想・歴史部門】は左地亮子『現代フランスを生きるジプシー 旅に住まうマヌーシュと共同性の人類学』(世界思想社)、前田亮介『全国政治の始動 帝国議会開設後の明治国家』(東京大学出版会)。左地氏はジプシーは「ヨーロッパとは何か、近代とは何かという問題を、私たちに鋭く問うてくる存在であり続けている。現代の移民難民問題にも通じている」と話した。 また前田氏は「戦前の日本における、立憲制の導入から定着に至る過程の再解釈、また再解釈の末に日本の近代化を問い直す問題意識から本書を書いた」「日本の中央と地方、ナショナルな政治とローカルな政治のよりよい均衡、安定を考える上で意味があると考えている」などと挨拶した。

この記事の中でご紹介した本
2017年12月15日 新聞掲載(第3219号)
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