連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(36)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年12月19日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(36)

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ドゥーシェ(左)とピエール・エテックス(右端)
HK 
 オタール・イオセリアーニは長年フランスに住み、フランスで映画を撮っていますね。
JD 
 イオセリアーニも、フランスで巨匠になることができた外国人作家と言えるかもしれません。ただ、彼も確かにフランス映画を撮ってはいますが、同じスタイルを貫き通しています。グルジアで得たスタイルに忠実です。やはりフランス映画に順応するのは難しいことなのだと思います。
HK 
 B級映画の作家には、いたような気がします。
JD 
 それに関しては、私はほとんど知りません(笑)。B級映画ならばできないことではないでしょう。B級映画で問題となるのは、作品を作る人々です。作品を演出する人が、スタイルです。だから、国籍のようなものはありません。
HK 
 そういえば、リュック・ベッソンは、アメリカで大きな成功を収めていますね。
JD 
 ベッソンは、そもそもどこの国から来た作家なのですか。

HK(笑)。
JD 
 彼は確かにフランス人ですが、作品は無茶苦茶です。重要なものではありません。結局のところ、悪い作品ばかりです。ベッソンは、ただ単に文化的背景を持っていない作家です。彼は漫画を映像に置き換えているだけです。ベッソンの国籍は、「映画」であると言えるかもしれません。しかし本来ならば、持ち味とできるような作風を、自ら拒否してしまった。だから、どうでもいいのです(笑)。
HK 
 アメリカには、フリッツ・ラングやジャック・ターナーのような外国から来た映画作家がいました。一方で、グリフィスやウォルシュ、フォードといったアメリカという国家の中から出て来た作家もいます。両者の間にはどのような違いがあるのですか。
JD 
 それら二種類の作家の間には、非常に大きな違いがあります。空間に対する違いです。この点については、慎重に話を進めなければいけません。ここで説明することは必ずしも全ての作家に当てはまることではありません。例外となる作家もいます。

アメリカに渡った映画作家たち、つまりアメリカでもキャリアを積み上げた作家たちは、明確な映画の形を頭の中で思い描く思考法を持っていました。言い換えるならば、世界に対する見方を持っています。

その一方で、アメリカの映画作家たちの原動力となるものは、アメリカの歴史の中から生まれています。つまり、世界に対する考え方を、自分たちの手を通じて作り上げるという意志です。未知の土地を彷徨い、開拓し、最後には勝ち取る。カメラは空間の中を探求し風景を作り上げていきます。これは、物事に対する別の見方です。アメリカの映画作家たちは、何かを獲得するという目的においてアクションを作り上げています。しかし同時に、広大な空間に対しても柔軟に対応しています。アメリカ映画における空間は、開かれています。これは、根本的なところでアメリカのウエスタンの特徴でもあります。このように開かれた映画は、常に進み続け、決して止まることがあってはいけません。常に動き続けなければいけません。反対に、ヨーロッパ出身の巨匠たちを考えると、彼らはおおよそ観念による映画作家であると言えます。ラングを例に挙げると、彼は確かにアクションという考えを、自らの映画に応用しています。ラングはアクションそのものです。しかしそのアクションの作り方が、アメリカの作家とは根本的なところで異なります。ラングのアクションを形作るのは、各々のショットのつながりです。一つのショットが次のショットを生み出し、また別のショットが生み出される。このようなシステムは、完全に頭の中で生み出されています。すでに構成された世界が存在するので、わざわざ世界を作り上げていく必要はありません。要するに、全くもって別の思考法にあるわけです。非常に面白い違いだと思います。ヒッチコックでさえ、ラングのようなところがあります。ヒッチコックの世界は、頭の中ですでに構成されています。彼は確かに非常によくアメリカ映画に溶け込んでいました。それでも、根本的なところではヨーロッパ的な特徴を持ち続けていました。

<次号へつづく>
2017年12月15日 新聞掲載(第3219号)
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