2017年回顧 韓国文学 胸躍る豊作の一年  シリーズものが多く出されたことも一因|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

回顧総評
2017年12月24日

2017年回顧 韓国文学
胸躍る豊作の一年 
シリーズものが多く出されたことも一因

このエントリーをはてなブックマークに追加
今年はカズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞が話題となったが、昨年2016年のブッカー賞国際部門は韓国の作家ハン・ガンが受賞して韓国では大きな話題となった。そういう意味では韓国の現代文学に対する国際的認知度は高まりつつあるのかもしれない。今年の日本での韓国文学の翻訳状況を見てもかつてなく充実した作品が並び、日本でも韓国文学の翻訳は潮流に乗りつつあるのかと期待を抱かせてくれる豊穣の一年だった。
今年の豊作の原因を少し考えてみると、一つにはシリーズものが多く出されるようになったことが挙げられる。クオンから出ている「新しい韓国の文学シリーズ」は以前から活発な翻訳を続けているが、今年もビョン・ヘヨン『アオイガーデン』(きむふな訳)、キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』(吉川凪訳)と充実した現代作品を出している。また、クオンからは「クオン人文・社会シリーズ」として姜仁淑カン・インスク『韓国の自然主義文学:韓日仏の比較研究から』(小山内園子訳)も出されている。また、今年から晶文社の「韓国文学のオクリモノ」シリーズが始まり、第1弾としてハン・ガンの『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子訳)、パク・ミンギュ『三美スーパースターズ最後のファンクラブ』(斎藤真理子訳)、キム・エラン『走れ、オヤジ殿』(古川綾子訳)の3冊が立て続けに出ている。他にも書肆侃侃房から「韓国女性文学シリーズ」が出ており、金呂玲キム・リョリョン『優しい嘘』(金那炫訳)、チョン・ユジョン『七年の夜』(カン・バンファ訳)が今年は出されている。このようなシリーズもののお陰でかつてなく翻訳のラインアップが充実した印象を持つ。

また、もう一つ豊作の原因としては近代文学の古典的作品から現代の最新作に至るまで翻訳の幅が広がっていることが挙げられる。近代文学の作品としては李箕永イ・ギヨン『故郷』(大村益夫訳、平凡社)が朝鮮近代文学選集の1冊として出され、また金東仁キム・ドンインの『小説大院君:雲峴宮の春』(岩方久彦訳)が彩流社から出ている。いずれも韓国の近代文学を代表する作家の作品である。そして、強調していいのは戦後の韓国文学を代表する作家たちの作品が相次いで出版されていることである。橋本智保氏によって李炳注イ・ビョンジュの『関釜連絡船』(上・下、藤原書店)の大作が訳され、また朴婉緒パク・ワンソの『あの山は、本当にそこにあったのだろうか』(かんよう出版)も同氏によって訳されている。また、李文求イ・ムングの『冠村随筆』(インパクト出版会)も安宇植、川村湊訳で出ている。いずれも戦後の韓国文学を代表する作品と言いうるもので、ぜひ多くの読者に読まれてほしい本である。

また、他にも紹介しきれないほどの翻訳が出ているが、白水社の海外文学シリーズであるエクス・リブリスからパク・ミンギュの『ピンポン』(斎藤真理子訳)が出ており、文炳蘭ムン・ビョンランの詩集『織女へ・一九八〇年五月光州ほか』(広岡守穂、金正勲訳)が風媒社から出ている。李吉隆イ・ギリュン『満州夫人』(舘野晢、五十嵐真希訳、かんよう出版)、姜英淑カン・ヨンスク『ライティングクラブ』(文茶影訳、現代企画室)、キム・ジョンヒョク『ゾンビたち』(小西直子訳、論創社)などの翻訳も出ている。変わり種としては北朝鮮を脱北した作家6人と韓国の作家7人による共同小説集である『越えてくる者、迎えいれる者――脱北作家・韓国作家共同小説集』(和田とも美訳、アジアプレス・インターナショナル出版部)が出ていて注目される。文在寅政権の文化体育観光部長官となった詩人ト・ジョンファンの詩集『満ち潮の時間』(ユン・ヨンシュク、田島安江訳、書肆侃侃房)も出ている。この他にも評論集や文学研究書なども数多く翻訳されているが紙幅が尽きた。このような心躍るような実り多い収穫が来年も続くことを祈りたい。

この記事の中でご紹介した本
アオイガーデン/クオン
アオイガーデン
著 者:ピョン・へヨン
出版社:クオン
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月22日 新聞掲載(第3220号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
佐野 正人 氏の関連記事
回顧総評のその他の記事
回顧総評をもっと見る >
文学 > 外国文学 > 韓国文学関連記事
韓国文学の関連記事をもっと見る >