2017年回顧 科学技術 日本の科学が世界水準に     人工知能は第三次ブームを迎える|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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回顧総評
2017年12月27日

2017年回顧 科学技術
日本の科学が世界水準に    
人工知能は第三次ブームを迎える

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今年はなかったが、日本人ノーベル賞科学者は二一世紀になってからは少なくない。昨年「ニホニウム」(Nh)が元素名として登録され、また地質年代名称に関する「チバニアン」(千葉時代)も有力候補になっているなど日本の科学が世界水準に到達したともいえる。金森修編『明治・大正期の科学思想史』(勁草書房)が刊行され、昨年までの昭和前期と後期に関する二冊と合わせ日本の科学思想史三部作が完結した(編者の金森氏は昨年亡くなったが、執筆者が完成させた)。三部作により、明治以降日本人が科学をどのようにとらえてきたかを通史的にとらえることができる。それに対し、山田慶兒『日本の科学―近代への道しるべ』(藤原書店)は、西欧科学受容史ではなく、一八・一九世紀における日本の独自性を解明している。杉山滋郎『「軍事研究」の戦後史―科学者はどう向きあってきたか』(ミネルヴァ書房)は、「軍事研究に手をそめない」としてきた、国際的にみて例外的な戦後日本における科学のあり方がどのような経緯で確立されてきたかを歴史的にあとづけ、日本の科学者は軍事研究に今日どう対応するべきかの問題に示唆を与える。

山田國廣『初期被曝の衝撃―その被害と全貌』(風媒社)は、三・一一原発事故による被曝や今も続いている広域放射能汚染の現状を明らかにしている。原発再稼働のさいに「安全が確認された」などといわれるが、橋本毅彦編『安全基準はどのようにできてきたか』(東京大学出版会)は、そもそも「安全基準」とは何かを問い、実際に社会的に設定された安全規準について、航空機、原子力、医療機器、食品など九事例をとりあげ、その成立の経緯を解明している。ハリー・コリンズ(鈴木俊洋訳)『我々みんなが科学の専門家なのか?』(法政大学出版局)は、「科学論の第三の波」の提唱者である著者が、専門家と同等の知識をもたない市民が科学技術をめぐる問題にどうかかわることができるかについて、「スペシャリスト専門知」「メタ専門知」などの概念を提示している。桑子敏雄編著『環境と生命の合意形成マネジメント』(東信堂)は、独自の環境哲学を理論として展開するだけでなく、日本各地の問題にも関与した編著者らが、地域・国土・医療などの現場における実際の合意形成過程の経験を語る。

人工知能は、これまで二回ブームがあったが、現在第三次ブームを迎えている。松田雄馬『人工知能の哲学―生命から紐解く知能の謎』(東海大学出版部)は、人工知能を「生命」という観点から哲学的に考察し、手放しの楽観論ではなく、人工知能を基盤とした社会の在り方を検討している。第二次人工知能ブームの際にはその関連が問題とされた脳科学であるが、小島比呂志/奥野クロエ『心はいつ脳に宿ったのか』(海鳴社)は、古代から現代にいたる脳神経科学をめぐる哲学的問題をあつかう。マイケル・ワイスバーグ(松王政浩訳)『科学とモデル―シミュレーションの哲学 入門』(名古屋大学出版会)は、現在科学研究において盛んに使われるようになったシミュレーションやモデルについて、同じ言葉の分野による違いや、その理論的問題を検討している。菅原和孝『動物の境界―現象学から展成の自然誌へ』(弘文堂)は、動物と人間の関係についてユクスキュル、ダーウイン、今西錦司、レヴィ=ストロースなどの議論を検討して、動物と人の境界の問題を扱った大著である。
科学史研究の基礎的な領域での成果として、ニコラウス・コペルニクス(高橋憲一訳・解説)『完訳 天球回転論―コペルニクス天文学集成』(みすず書房)が刊行された。本書は、天動説から地動説への転換をもたらした原著作の訳であるが、科学史一級の古典の完訳である。関連著作、書簡なども収録され、全編に付した訳者による注釈と解説によって、これまでも多くのことが語られてきた「コペルニクス革命」の全貌が原典に即して提示されている。化学史学会編『化学史事典』(化学同人)は、化学史学会創立四十周年の記念事業として刊行された。「化学事典」ではなく、化学史と化学技術史に特化した世界でも初めての事典であり、「科学史学会」とは別に「化学史学会」が日本にあることによって可能になったものである。

この記事の中でご紹介した本
明治・大正期の科学思想史/勁草書房
明治・大正期の科学思想史
著 者:金森 修
出版社:勁草書房
以下のオンライン書店でご購入できます
我々みんなが科学の専門家なのか?/法政大学出版局
我々みんなが科学の専門家なのか?
著 者:ハリー・コリンズ
出版社:法政大学出版局
以下のオンライン書店でご購入できます
完訳 天球回転論  コペルニクス天文学集成/みすず書房
完訳 天球回転論 コペルニクス天文学集成
著 者:高橋 憲一
出版社:みすず書房
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月22日 新聞掲載(第3220号)
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