2017年回顧 日本史/中世史 様々な視角からの著作 政治体制、寺社勢力、一族、地域史の研究から|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年12月28日

2017年回顧 日本史/中世史
様々な視角からの著作
政治体制、寺社勢力、一族、地域史の研究から

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本年も分野に偏りなく、様々な視角からの著作が発表された。たとえば前田英之『平家政権と荘園制』(吉川弘文館)・市川裕士『室町幕府の地方支配と地域権力』(戎光祥出版)・片山正彦『豊臣政権の東国政策と徳川氏』(佛教大学)など政治体制を中心に検討したもの、寺社勢力を主要な対象としたものには畠山聡『中世東大寺の国衙経営と寺院社会』(勉誠出版)・山崎常人『歴史のなかの根来寺』(同)・平雅行『鎌倉仏教と専修念仏』(法蔵館)・永村眞『中世の門跡と公武権力』(戎光祥出版)・渡辺修『神宮伝奏の研究』(山川出版社)などがあった。また、近年の動向を継承して一族研究の成果には、高橋修『佐竹一族の中世』(高志書院)・横山住雄『中世美濃遠山氏とその一族』(岩田書院)・小豆畑毅『陸奥国の中世石川氏』(同)など、都市・地域研究にも小西瑞恵『日本中世の民衆・都市・農村』(思文閣出版)や中世都市研究会『「宗教都市」奈良を考える』(山川出版社)などのほか、考古学の成果を盛り込んだ秋山哲雄『鎌倉を読み解く』(勉誠出版)があり、高橋修『鎌倉街道中道・下道』(高志書院)は街道を通した地域史研究といえるだろう。なお、街道に限らず水陸を移動する人々に関して、日本史・西洋史・建築史・美術史の各分野から考察した高橋慎一朗『移動者の中世』(東京大学出版会)があった。

また、絵画資料を素材とした二点の成果が発表された。額田雅裕『絵図でよむ荘園の立地と環境』(古今書院)は、その書名から多くの荘園絵図を分析するものと想像したが、実際には絵図そのものを読み解くというよりも、絵図に描かれた現地を、地質分析などの結果を用いながら解析する。豊富に挿入された地形分類図や地域概念図は、その立地環境を理解するうえで大いに参考になったが、合わせて絵図自体ももう少し掲示されていれば、一層イメージが豊かになっただろう。井戸美里『戦国期風俗図の文化史』(吉川弘文館)が主な検討の素材とするのは「月次風俗図屏風」である。この屏風絵は教科書に紹介されることも多く、評者も漠然とした知識はあったが、本書によってこれほど豊富な切り口があるのかと驚かされた。二書からは、絵画資料の奥行きの広さを学び直した。

応仁の乱(呉座 勇一)中央公論新社
応仁の乱
呉座 勇一
中央公論新社
  • オンライン書店で買う
そして昨年来、日本中世史を代表する話題の一書といえば、呉座勇一『応仁の乱』(中公新書)であろう。本年はこれに刺激を受けたかのように、室町時代の争乱をテーマとした著書が刊行された。応仁の乱に先立って東国で展開した戦乱を描く峰岸純夫『享徳の乱』(講談社選書メチエ)は、戦国時代は京都を中心とした応仁の乱からではなく、東国から始まったことの周知を宿願とする、長年東国史研究を牽引してこられた著者渾身の一書。また亀田俊和『観応の擾乱』(中公新書)は室町幕府成立期に勃発した、その後の幕府の方向性を決定づけた兄足利尊氏・弟直義間の紛争を主題とする。本書の登場人物はそれぞれ魅力的だが、そうした彼らの行動を規定した社会の様子が、もう少し描かれても良かったか。
この記事の中でご紹介した本
絵図でよむ荘園の立地と環境/古今書院
絵図でよむ荘園の立地と環境
著 者:額田 雅裕
出版社:古今書院
以下のオンライン書店でご購入できます
応仁の乱/中央公論新社
応仁の乱
著 者:呉座 勇一
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月22日 新聞掲載(第3220号)
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