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2017年12月28日

2017年回顧 日本史/近代史
時代に大きな区切りがつけられようとしている時

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「日本統治時代の遺構」(斉藤マサヨシ『サハリンに残された日本―樺太の面影、そして今』北海道大学出版会)、「原爆の図」などを描いた故人の生(菅聖子編、写真本橋成一『位里と俊』オフィスエム)、を記録した写真集が二冊。写真が史料として整えられれば、それは過去を知り歴史を考える手立てとなり、写真はまた、ひととひととのつながりや切断のようすとその考え方をあらわす(ミリネ編『家族写真をめぐる私たちの歴史―在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性』御茶の水書房、17年第2刷)。その一方で、表現体としての写真が政治や司法の場に人びとを引き出す(安世鴻ほか編『誰が〈表現の自由〉を殺すのか―ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件裁判の記録』同前)。

かのひとの言葉が発端となり、わたし(たち)の意思がきちんと確かめられたとはおもえないままに、国民の総意にもとづくかのように時代に大きな区切りがつけられようとしているときの論点を示した二冊(吉田裕ほか編『平成の天皇制とは何か―制度と個人のはざまで』岩波書店、堀内哲編『生前退位―天皇制廃止―共和制日本へ』第三書館)。

歴史をとらえ表現する局面や形勢の妙を知る三冊(長廣利崇『高等商業学校の経営史―学校と企業・国家』有斐閣、小川真和子『海の民のハワイ―ハワイの水産業を開拓した日本人の社会史』人文書院、遠藤正敬『戸籍と無戸籍―「日本人」の輪郭』同前)。

「戦後」の切りとり方にくふうを凝らした五冊(宇野田尚哉ほか編『「サークルの時代」を読む―戦後文化運動研究への招待』影書房、16年12月、権赫泰ほか編、中野宣子訳『〈戦後〉の誕生―戦後日本と「朝鮮」の境界』新泉社、西川祐子『古都の占領―生活史からみる京都1945―1952』平凡社、岩間優希『PANA通信社と戦後日本―汎アジア・メディアを創ったジャーナリストたち』人文書院、森宣雄ほか編『あま世へ―沖縄戦後史の自立にむけて』法政大学出版局)。そこでとりあげられた沖縄が、戦争と戦後と現在とを考えるときの前線となる(辺見庸、目取真俊『沖縄と国家』KADOKAWA、沖縄戦・精神保健研究会編『沖縄からの提言 戦争とこころ』沖縄タイムス社)。歴史と現在とをつなぐ思索の前線は水俣にも療養所にも被災地にもある(下田健太郎『水俣の記憶を紡ぐ―響き合うモノと語りの歴史人類学』慶應義塾大学出版会、崔南龍『一枚の切符―あるハンセン病者のいのちの綴り方』みすず書房、有薗真代『ハンセン病療養所を生きる―隔離壁を砦に』世界思想社、伊藤浩志『復興ストレス―失われゆく被災の言葉』彩流社)。


学への問いが著作という史料となって、歴史を考えようと鍛錬するものの足場となるようすをみせる二冊(武田晴人『異端の試み―日本経済史研究を読み解く』日本経済評論社、赤澤史朗ほか編『触発する歴史学―鹿野思想史と向きあう』同前)。
この記事の中でご紹介した本
2017年12月22日 新聞掲載(第3220号)
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