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漢字点心
2016年9月9日

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九月九日は、菊の節句。そこで、「菊」という漢字を取り上げてみよう。

漢和辞典編集の仕事を始めたころ、ちょっと意外に感じたのは、「菊」を「キク」と読むのは音読みだ、ということだった。音読みとは、中国語としての漢字の発音が、日本語風に変化して生まれたもの。日本の秋を彩る風物詩の「キク」がもともとは中国語だという事実に、不意を突かれたのだ。

では、訓読みでは「菊」を何と読むかというと、たいていの漢和辞典は訓読みを載せていない。つまり、キクという植物には、定着した日本語名はないということだ。実際、『万葉集』の時代には日本にキクはなかったらしい。そのあとに中国から渡来して、漢字の発音そのままで呼ばれるようになったのだろう。

にもかかわらず、キクは短期間のうちに、日本の文化に浸透していった。それは、中国文化の影響力の強さの現れだろう。が、今日のところは、すなおにキクの美しさをめでることとしたい。
2016年9月9日 新聞掲載(第3156号)
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