八重山暮らし(24)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

八重山暮らし
2018年1月16日

八重山暮らし(24)

このエントリーをはてなブックマークに追加
カンヒザクラ。沖縄では北から南下して桜が開花する。 (撮影=大森一也)
冬の桜


見頃は二月か。一月に桜を愛でながら、黒潮と共に北へ連なる風土の豊かさを悦ぶ。大ぶりで華やかな南国の花たちに埋もれながら、島の桜は薄紅色の花を精一杯に咲かせる。季節は雨期。濡れそぼつ花びらが何ともいじらしい。

新しい年を迎え、最南端の島では「日本一早い…」が目白押しだ。じきに田植えも始まる。冬の間、小雨交じりの冷たい北風が吹き荒ぶが、樹木草花にとっては、やわらかな陽射しがほどよい気候にあたる。

西表島に移住してから、旬の野菜に事欠くことはなかった。とりわけ冬の季節には、白菜、大根、人参、キャベツ、キュウリにトマト…、取れ立て虫食いだらけの野菜をよく頂いた。家族のために丹精込めて作られた無農薬野菜。ひとりでは消化しきれないほどたくさんあった。有り難くて、朝に夕にとあびるように食べた。島野菜は簡素にマース(塩)で味付けするのがいい。菜食主義者のごとき生活を長らく送る。

四〇歳を過ぎてようよう結婚し、新しい、いのちを身ごもった。これは、ひとえに島野菜のおかげと合点した。山と海が醸し出す精気を含んだ空気、日々に食した野菜によって、この躰の細胞のひとつひとつまでが浄化されたのだ。何ら医学的、科学的根拠などない。けれど、それにたすけられたと篤く信じた。

冬の畑に野菜が満ちる嬉しさ…。一月に咲く桜を眺めながら、ささやかな夕餉の手順をつぶやいた。
2018年1月12日 新聞掲載(第3222号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
安本 千夏 氏の関連記事
八重山暮らしのその他の記事
八重山暮らしをもっと見る >
人生・生活 > 生き方関連記事
生き方の関連記事をもっと見る >