高度経済成長に挑んだ男たち / 小林 吉弥(ビジネス社)政治家、政官の理想と情熱と決断を検証する|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年1月13日

政治家、政官の理想と情熱と決断を検証する

高度経済成長に挑んだ男たち
著 者:小林 吉弥
出版社:ビジネス社
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著者は、佐藤栄作政権中期の昭和44年(1969年)から48年間にわたり永田町取材に関わり続けている政治評論家。敗戦日本国の焼土、廃墟の中から奇蹟的といわれ、エコノミックアニマルといわれる高度経済成長に取り組んだ政治家たち、政官の必死な復興への理想と情熱と決断を本書は見事に検証している。

「戦後の政治権力は、吉田茂、岸信介、池田勇人、佐藤栄作といった官僚出身の首相が、ほぼその主体となってきた。政治と行政がよく言えば一体化、悪く言えば政権政党と官僚の呼吸合わせの“独走”の中で、国民は戦後復興はこれに任すしかないとの思いを強めていたからにほかならない。やがて戦後復興が成り、民主主義の空気が広がりを見せる中で、国民は“風通し”のいい政治を要求し始めたということであった。“政治を国民の手に”ということであった。政治は、エスタブリッシュメント(特定身分)の者だけにあらずということでもあった」

著者によれば、宮沢喜一以後、細川護熙から現在の安倍晋三までの11人の首相は誰一人官僚出身者はいない。安倍首相を除けば、いずれも短命政権。ポピュリズム(大衆迎合主義)に傾むいた政治手法をとらざるをえなかった結果であると分析する。安倍は「内閣人事局」をつくり、官僚の人事を政権が握るという“便法”で官僚を取り込んでしまったゆえの長期政権とも言えるという指摘は重要である。“特定身分”に戻る危険をはらんでいる。

日本経済が飛躍的な成長を遂げた高度経済成長時代は、一般的には昭和30年(1955)から48年(1973)までの約18年間とされている。著者は、池田勇人と佐藤栄作の意欲的な経済政策に本書の柱を立てており、人物エピソードなどもいきいきとしている。

池田の“所得倍増論”の具体的説明にしても、実証的に池田新政権の積極案についての記者会見記を示す。<政治とは国民生活を引き上げ、社会保障を充実させることである。10年間に所得を倍増するには、年7・2%の経済成長が必要となる。過去5年間の成長率は9%を越えている>と池田は自信を示す。

本書の最終章は「行き場が見えない日本経済」となっている。著者は、「一言で言えば、不透明感に満ちている」とし、いくつかの要因をあげている。アベノミクスの異次元緩和もいよいよ限界に近い。金利上昇は借金1000兆円超の財政をさらに圧迫する。財政はいよいよ逼迫、再建の目途は立たなくなると。

政権担当の政治家、そして官吏、必読の書だ。
この記事の中でご紹介した本
高度経済成長に挑んだ男たち/ビジネス社
高度経済成長に挑んだ男たち
著 者:小林 吉弥
出版社:ビジネス社
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2018年1月12日 新聞掲載(第3222号)
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