【横尾 忠則】やりたいことを貫け! いつも闘う相手は勇気|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年1月23日

やりたいことを貫け! いつも闘う相手は勇気

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2018.1.8
 60~70年代のアングラ仲間10数人と郷里の校舎の屋上で山々を背景に記念撮影をする夢を見るが、郷里とアングラはぼくにとっての原郷なのかも知れない。

夢を記述したり、また話すことで潜在意識が顕在意識と統合されて共時性シンクロニシティが起こるとユングが言う。確かに日常でしばしばシンクロニシティを経験することが多い。時には夢が重層して、入れ子構造的になることもある。そして夢の中でシンクロニシティが起こる場合もあるようだ。ぼくは夢を作品化することも時々あるけれど、自分の描く絵がすでに夢を製造しているように思うことがある。

2018.1.9
 増田屋でそばを食べたあと、店内が混雑していて勘定できないのでひとまず帰宅して、妻に払いに行くよう伝えるが、妻は外が暗いこんな早朝は店も開いてないという。どうも夢の中で増田屋に行った夢を見て、その夢の中で目覚めてから妻に話しているらしい夢を見たようだ。最近は現実と非現実の境界を無視した夢が多くなっているような気がするが、何の前兆?

2018.1.10
 下町の商店の隣家と接した角家に引越しすることになったらしい。その理由は不明だ。昭和のどこにでもあった家屋だ。妻は問題なく受け入れているようだ。こんな家から芸術は生まれないという拒絶反応を起こす夢だ。先週は京都に引越す夢だったが、無意識の考えることはよくわからん。

この間出た「アイデア」のぼくの特集号を見たイランのテヘランとカナダのトロントを拠点に刊行している「Neshan」誌より作品の転載依頼あり。

午後、展覧会に出品予定の作品の撮影に上野さん、足もみの中田先生、松竹の濵田さん、凸版印刷の富岡さんら来訪。そんな混雑した中で制作。来客が多いせいとは無関係だと思うが、絵具が衣類にベタベタつきまくる。

2018.1.11
 岩波書店の因幡さん、清水さんが「韓国の民衆美術」の著者古川美佳さんと装幀の依頼に来訪。プロパガンダ的な美術運動をドキュメントしたレポートが内容だが、ぼくと対極のテーマだ。社会的変革よりも個人的変革に関心があるぼくは思想を持たない思想を持つ人間なので、あれこれ分別しない無分別の次元で何ができるか試すのも何かの試練になるのでは?

こんなミーティングの最中にバタバタと文章のゲラ校正やメールが次々妨害するように入ってくる。

帰宅間際に完成間近の絵にウヮーと描き込んで、創造と破壊の同時進行を客観的に演出することで人工的狂気を促す。

アレハンドロ・ホドロフスキー監督と(撮影・平岩亨)
2018.1.12
 「Pen」で手塚治虫特集を企画。かって手塚さんと対談した時の想い出話などをする。ある時手塚さんから「あなたの展覧会はほとんど見ています」と葉書をいただいたことがあった。手塚さんはご自分のことを漫画家と呼ばないで「絵描き」と呼んでおられた。絵は一瞬に作家が語りたい内容が伝わるので、お互いに絵描き同士は瞬時に溶け合うけれど物書きとはどうも距離があり過ぎるなんておっしゃっていたっけ。

ホドロフスキー監督「エンドレス・ポエトリー」をすでにDVDで観ていたのを忘れて、映画館に観に行く。詩人を志望していたので、詩的な言葉が時々邪魔になる。彼の映画は絵画的なので、詩は絵画と親和性がある。だからビジュアルで詩を語ればいい。日本の古典芸能に興味のある彼は、ふんだんに日本の伝統様式を持ち込むが、消化不良のまま描かれるのでソフィストケイトされない場合があるが、やりたい放題は昔から変らないが、88歳の老齢になって益々過激である。保守的な人間には恐ろしい映画である。考えるな! やりたいことを貫け! が彼のメッセージである。

2018.1.13
 ちょっと絵が上手く行きそーになると、守りに入って、従来の方法論に従おうとする。「やりたいことをやる」気持から遠ざかっている。そして平均的な作品を製造してしまう。こーいう時に必要なのは失敗を恐れない勇気だ。いつも闘う相手は勇気だ。

2018.1.14
 「よーし。ヨッシャ!」と元気づけてアトリエに行くが、昨日の勇気が中々出てこない。というか、二つの方法が浮かんだのである。そのどちらも未知の体験になるだろう。同じ絵が二枚あると同時に二種類の実験ができるはずだ。でもアーデモナイ、コーデモナイと言っているこの間が実は一番楽しい時間かも知れない。

全国都道府県対抗女子駅伝をビデオで観る。地元の西脇工出身のランナーが2人出場して9位から最終区でトップを奪い、とうとう兵庫が優勝してしまった。(よこお・ただのり=美術家)
2018年1月19日 新聞掲載(第3223号)
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