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American Picture Book Review
2018年1月30日

『終点はマーケット・ストリート』

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Last Stop on Market Street(Matt de la Peña)Puffin
Last Stop on Market Street
Matt de la Peña
Puffin
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幼い少年CJは教会でのお祈りのあと、今日もおばあちゃんと一緒にバスに乗る。友だちはお父さんの運転する車でさっさと行ってしまった。雨も降ってるのに、どうしてボクたちはバスを待つの? どうして車じゃないの? CJのそんな不満など、おばあちゃんは気にもかけない。いったんバスに乗るとCJも文句など言わなくなることを、おばあちゃんは知っているのだ。

バスにはいつもいろんな人が乗っている。愉快な顔なじみの運転手さん。大きなガラスの瓶に、なぜか蝶々を入れて膝にかかえている女の人。全身タトゥだらけでスマフォをいじっているおにいさん。CJのおばあちゃんは盲導犬を連れた目の見えない人とおしゃべりをしている。CJはイヤフォンで音楽を聴いているティーンエイジャーがうらやましい。でも、バスの中でギターを弾き始める人がいた! 目をつむってギターのメロディに身をまかせると、想像力豊かなCJはたちまち空想の世界に旅立てる。さっきまで文句ばかり言っていたCJは、すっかりご機嫌さんだ。

やがてバスは終点のマーケット・ストリートに着く。たくさんの人で賑わっていそうな名前に反して、荒廃している。建物の窓は板で覆われ、ドアは壊れている。壁は落書きだらけで、道は薄暗い。CJは「ここはどうしていつも汚いの?」と聞くけれど、おばあちゃんはどんな時にもステキなことを見つける天才だ。この時も雨上がりの空に綺麗な虹を見つけた。

ふたりが向かったのは、スープキッチンだった。ホームレスや貧しい人に無料で食事を提供するスープキッチンで、おばあちゃんとCJは毎週ボランティアをしているのだった。

本書の作家、マット・デラ・ペーニャはニューヨーカーだ。ユニークな人たちに会えるバスはいつもワクワクし、それを絵本にしたかったと語っている。だが、ペーニャはニューヨークの負の現実を書き添えることも忘れなかった。ニューヨークには今、大恐慌以来の記録となった6万3000人ものホームレスがいる。うち2万4000人は子供だ。野宿ではなく、シェルターに投宿しているとはいえ、今冬のニューヨークは2週間にわたって氷点下の寒波に襲われ、雪嵐にも見舞われた。この厳しい現実をひそかに支えているのが、CJとおばあちゃんのような市井の人たちなのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
この記事の中でご紹介した本
Last Stop on Market Street/Puffin
Last Stop on Market Street
著 者:Matt de la Peña
出版社:Puffin
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年1月26日 新聞掲載(第3224号)
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