二〇一七年度東京女子大学学会主催 公開連続講演会 歴史のなかの『LGBT』 第四回 愛 と 市 民 ―共和国・アメリカのつくりかた― 講師:松原 宏之氏 (十月三〇日)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年1月28日

二〇一七年度東京女子大学学会主催 公開連続講演会
歴史のなかの『LGBT』 第四回 愛 と 市 民 ―共和国・アメリカのつくりかた―
講師:松原 宏之氏 (十月三〇日)

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二〇一七年度東京女子大学学会主催公開連続講演会「歴史のなかの『LGBT』」が二〇一七年十月、四回にわたって開催された。現在、私たちが当たり前としているジェンダー観や性の規範が歴史的にどう形成されてきたのか。日本史、ドイツ史などを通して見てきた講演の四回目はアメリカ史。連続講演会の最終回をレポートする。 (編集部)
 

【第一~三回の講演レポートはこちら】
■第一回 「あいまいな性」への抑圧は文明開化から始まった(講師:三橋 順子氏)
■第二回 LGBTを語る ―性の多様性のなかで―(講師:星乃 治彦氏)
■第三回 記憶とジェンダーのポリティクス 『エメーとジャガー』を事例に考える(講師:石井 香江氏)
第1回
■現代アメリカとLGBT

講師:松原 宏之氏
第四回目の講師は、アメリカ合衆国史、政治文化史、ジェンダー史を研究する松原宏之氏(立教大学文学部教授)。松原氏は講義に先立ち、「LGBTは近いようでなかなか近づけないテーマのような気がする。今日はアメリカのケースを具体的に見ていきながら、話し合えたらと思っている」と話し、報道記事や歴史的瞬間を記録した写真、当時の状況を映し出すプロパガンダ・ポスターなどを手掛かりに講義を進めた。

・真夜中の救急病院で 

二〇一五年六月二六日、アメリカ最高裁で同性婚を憲法上の権利として認めるとする判断が下された。松原氏はこの出来事をもう少し踏み込んで考えてみたいとして、夜中の救急病院の待合室での場面を想定し、次のように語った。

・真夜中の救急病院で

初老の女性同士のカップルがいる。ある夜、一方の女性が急病で倒れて救急病院に搬送される。その女性は緊急治療室に運ばれ、連れ合いの女性はうちひしがれて待合室で待っている。

「一九六〇年くらいの状況だと、その連れ合いの女性は同性のパートナーのことを、“友人”が倒れたと言うしかなかった。しかし、同性パートナーからすれば単なる性指向の問題ではなく、法的にも社会的にも、自分たちがどうやって生きるかにかかわってくる切実な問題である」。

私たちは中立的な社会に生きていると思い込んでいる。しかし、この社会の根本的な制度やさまざま場面にジェンダーはしっかり埋め込まれている。

「その社会で適切とされるジェンダー関係を持っていない人は弾かれてしまう状況がある。そういう意味で二〇一五年六月の同性婚の承認は、アメリカ社会の一つの転機とも見られる非常に大きな出来事だった」。

・解放への道のり

ただし、この達成の意味は長い歴史学的なスパンと時間軸において考えるべきだと松原氏は言う。

「一九六〇年代に公民権運動が高揚し、同性愛者たちの解放運動の嚆矢として知られる「ストーンウォールの反乱」(一九六九年)が起き、これを転機に段々に状況が良くなって、遂に二〇一五年の同性婚承認に至るというのが一つの描き方としてある。ではアメリカにおいてLGBTの地位が一直線に向上してきたのかというとそうでもない。一九九六年には、結婚防衛法(DOMA=Defenseof Marriage Act)(註1)という法律が誕生し、同性婚の禁止が州憲法にも書き込まれていく。二〇〇〇年代からそれを押し返そうとする力が働いて、やっと転換してくるのがここ数年で、二〇一五年以降は全州で同性婚が承認される。ここに至るまでの非常に強い抵抗、反発が何なのかを考えておく必要がある」。

(註1)結婚防衛法=一九九六年に制定された連邦法。「婚姻」を「一人の男性と一人の女性とによる法的な結合」、「配偶者」を「夫婦である異性の相手」と定義した米国の法律
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2018年1月26日 新聞掲載(第3224号)
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