本多真弓『猫は踏まずに』(2017) 「新発売!〈朝に咥へて走る用〉恋がはじまる春の食パン」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2018年1月30日

「新発売!〈朝に咥へて走る用〉恋がはじまる春の食パン」
本多真弓『猫は踏まずに』(2017)

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猫は踏まずに(本多 真弓)六花書林
猫は踏まずに
本多 真弓
六花書林
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学校に遅刻しそうになった少女が食パンを咥えたまま大急ぎで走っていたらぶつかった相手が実は転校生、第一印象は最悪だったけどだんだん気になっていって……というのは「少女漫画のお約束パターン」としてたびたびパロディの題材にされている。しかし実際にそのようなシーンがある作品が存在するわけではなく、相原コージ・竹熊健太郎『サルでも描けるまんが教室』(1989年)にて最初から「少女漫画にありがちな展開」のパロディとして生み出されたもの、というのが通説になっている。実態のないものがイメージだけで流布した典型例といえるだろう。

「食パン少女」のお約束を誰もが知っていることを前提としたうえで成り立っているパロディ的短歌がこれ。食パンを咥えたまま走ってぶつかった相手と恋がはじまるのではなく、恋をはじめたいから食パンを咥えて走るのだという本末転倒ぶりが、ユーモアに転化されている。決してありえない新商品じゃなさそうなところに苦笑してしまう。

「春」であることも大きなポイントだろう。新学期で転校生が来る時期だし、暖かくなれば浮き足立って恋もはじまりそうだし、何よりもヤマザキ春のパンまつりの季節だ。風流な季節感としての春ではなく、サブカルチャーとあざとい資本主義に支配された現代日本ならではの「春」の季節感を表現してみせようとした、なかなか皮肉のきいた一首といえるだろう。
この記事の中でご紹介した本
猫は踏まずに/六花書林
猫は踏まずに
著 者:本多 真弓
出版社:六花書林
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年1月26日 新聞掲載(第3224号)
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