第37回 全国高校生読書体験記コンクール 入賞者発表・表彰式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年2月2日

第37回 全国高校生読書体験記コンクール 入賞者発表・表彰式開催

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第37回2017年度全国高校生読書体験記コンクール(公益財団法人一ツ橋文芸教育振興会主催)の表彰式が1月29日、水道橋・東京ドームホテルで開催された。第37回となる今回は、全国47都道府県から427の高校が参加、110、190編の応募があった。
角田 光代さん
表彰式では、一ツ橋文芸教育振興会理事長・堀内丸惠氏による開会の挨拶、各賞の受賞者及び在籍校の表彰、祝辞に続いて、選考委員を代表して角田光代氏による講評が行われた。角田氏は選考の基準について、読書感想文とは異なる「読書体験記」の難しさに触れ、「一冊の本は、個人の体験より、感情より、はるかに大きい。一冊の本が一人の体験を代弁するものでなく、一冊の本によって書き手の思考や行動が広がった体験を描いた作品を選んだ」とし、各受賞作について、「伊東朋香さんの「ままならぬままに」は、小説によって未来を身近に思い描き、自分はどのような未来を望んでいるかを明確に書いている。齋藤淑人さんの「言葉という心臓」は、『人間失格』を読み返し、太宰治が入水した川を実際に父と訪れ、そこでまた新たな思考をしている。北川奈央子さんの「ピエロに救われて」は詩人の詩に出逢って北川さん自身がどのように変化したのか、とてもうつくしい文章で描かれている。足立拓真さんの「陽が昇り始めた僕等」には嘘がない。公明正大な高校生にはなれない、でも精一杯「欲張り」の高校生であろうとする姿が浮かび上がる。小田瞳さんの「なぜ」を読み、私は自分が高校生のころよりなぜと思わなくなったことに気付かされ、恥ずかしいと思った。疑問を持ち続けることの気持ちの強さを思い出させてくれた。中村望美さんの「青い、スーッとするような絵」の文章が素晴らしかった。ラストの文章は中村さんが何を体験したかをリアルに伝え、それを読み手にも体験させてくれる。辻真紀子さんの「幸せの種はそれぞれの心の中に」も優れた体験記で私も昔ベトナムを旅して辻さんと同じようなことを考えたがこのようなみごとな文章にすることはできなかった。もう一度私にベトナムを歩く、考えるチャンスを与えてくれた。安光英美さんの「「We」を広げて」は、体験と知識と読書と自分自身の言葉をそれぞれきちんと格闘させて融合させた体験記だった。戦争や事故や震災が起きたとき死傷者が何人だと言われたときの違和感を安光さんの言葉で改めて考えさせられた。優れた体験記はもう高校生でない私たちにも新たなそれこそ高校生のようなみずみずしい体験や発見をさせてくれるものなのだと改めて感じた」と、角田氏が受賞作から受け取ったメッセージを伝えるとともに、受賞者への温かい励ましの言葉が贈られた。
安光 英美さん
答辞では、受賞者代表の高校二年生・安光英美さんが、「昨年の夏、一冊の本との小さな出会いから、高知県の小さな町での小さな私の感動が幸運にもみなさんの目に触れることとなった。自分の心の中にある声を一つひとつ言葉に変えて書き直す作業は楽しくもあり苦しくもあった。しかし、ペンの力を借りて出来上がったこの読書体験記が私の故郷を飛び出して多くの方々へ私の心を伝えてくれたことを体験し、改めてペンの影響力を実感している。日々当たり前のように死者何人、難民何人というニュースが流れ、それを聞いても一人ひとりの顔を浮かべることはほとんどないのに、友達や家族が少しでも怪我をすれば自分のことのように心配になる。なぜこのような違いが生じるのか、自分のことのように思える「We」と、その他大勢になってしまう「They」の違いはなんなのか、この本は私がぼんやりと考えていた「We」と「They」について考えさせてくれる大きなきっかけとなった。本書の中の医師の呟きの部分を読んで、ハッとした。
「We」と「They」との境界線は絶対ではなく、相対的な条件で変わっていくことを、医師の言葉に見たからだ。

受賞を機に祖父の書斎に茶色くなった『海と毒薬』を見つけ、空間だけでなく時をも超えるペンの力を感じている。作家だけでなく、作家が作り出した登場人物たちと時空を超えて対話をする中で自分とも対話し、まさしく「We」を広げるだけでなく深めていくことができる。これが本の力、ペンの力なのだと思う。未熟な私のペンの力をここまで支えてくださった多くの方々に感謝しつつ、人類共通のペンの世界をさらに冒険していくことを楽しみとしたい」と答辞を締めくくると、会場からは受賞者全員に惜しみない拍手が贈られた。

【中央入賞者】

▼文部科学大臣賞…安光英美(高知学芸高等学校二年)「We」を広げて(体験書籍『海と毒薬』遠藤周作著)

▼全国高等学校長協会賞…中村望美(石川県立金沢桜丘高等学校三年)青い、スーッとするような絵(体験書籍『絵のなかの散歩』洲之内徹著)

▼全国高等学校長協会賞…辻真紀子(徳島県立脇町高等学校二年)幸せの種はそれぞれの心の中に(体験書籍『母は枯葉剤を浴びた ダイオキシンの傷あと』中村梧郎著)

▼一ツ橋文芸教育振興会賞…伊東朋香(女子学院高等学校一年)ままならぬままに(体験書籍『ままならないから私とあなた』朝井リョウ著)

▼一ツ橋文芸教育振興会賞…齋藤淑人(新潟県立長岡高等学校二年)言葉という心臓(体験書籍『人間失格』太宰治著)

▼一ツ橋文芸教育振興会賞…北川奈央子(浜松市立高等学校三年)ピエロに救われて(体験書籍『中原中也詩集』河上徹太郎編)

▼一ツ橋文芸教育振興会賞…足立拓真(兵庫県立北摂三田高等学校一年)陽が昇り始めた僕等(体験書籍『落日燃ゆ』城山三郎著)

▼一ツ橋文芸教育振興会賞…小田瞳(山口県立熊毛南高等学校一年)「なぜ」(体験書籍『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン著、長山さき訳)
2018年2月2日 新聞掲載(第3225号)
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