連 載 ヌーヴェルヴァーグ/ラングロワ/バザン ジャン・ドゥーシェ氏に聞く43|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2018年2月13日

連 載 ヌーヴェルヴァーグ/ラングロワ/バザン ジャン・ドゥーシェ氏に聞く43

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サミュエル・フラーの娘サマンサ(左)と
HK 
 「映画の外と中」という話が出たので、ヌーヴェルヴァーグとは何だったのかという話をしましょう。というのも、先日、フランス・キュルチュール(国営公共ラジオ文化放送)でシネマテークについてのプログラムが組まれていました。その中でラングロワの言葉が引用されていました。「ヌーヴェルヴァーグとは、第一に、学校の優等生に対する独学であった。第二に、芸術的創造は学校の中で学べると信じる人々に対抗する方法だった。それに加えて、映画の源へと回帰したい観客達の反抗だった。」
JD 
 ラングロワの言う通りです。非常によく言い表されています。
HK 
 ドゥーシェさんは、ヴァルダ、ルネのような作家は「ヌーヴェルヴァーグ」の作家というよりもドキュメンタリー作家であると、いつも言っています。ラングロワと似た観点を持っていると思います。
JD 
 確かにその通りです。ヴァルダや他の作家たちも、映画の新しい流れ(=ヌーヴェルヴァーグ)の中にはいましたが、それ以上にフランス映画の伝統の中にいました。一方で私たちは、伝統からの断絶でした。
HK 
 ドゥーシェさんと一緒にいた作家たちが、それまでの流れを破壊したということですか。
JD 
 ラングロワの言っている通りです。彼が全てを言い表しています。いずれにせよラングロワは、いかにして映画の歴史を展開し、どのように映画をプログラムすればいいのかわかっていたという意味において、当然のごとくしてヌーヴェルヴァーグという動きの中にいました。ラングロワは、それから先の映画を、いかにして続けて行くのかを私たちに示しました。一方で、当時の私たちはまだ20歳前後であり、仕組みの中に組み込まれていませんでした。そして、映画の中にまぎれもなく存在してはいるが、その当時の映画では表現しきれていなかった何かへと到達するために、その当時の映画で支配的だった伝統的な側面を壊さなければいけませんでした。そうであるからこそ、伝統からの断絶が必要でした。
HK 
 ドゥーシェさんはラングロワのことを非常によく知っていたのですよね。シネマテークで今日に到るまで続いている「ジャン・ドゥーシェのシネクラブ」は、元々はラングロワのシネクラブです。
JD 
 彼のことは本当によく知っていました。それは別にしても、ラングロワは私たち皆にとって絶対的な典拠です。私たちは皆、彼によって教えを受けたのも同然です。学校教育のように直接的な指導があったわけではありません。しかし、映画がいかなるものかを知っていた彼のプログラムを通じて、映画とは過去であり、その過去の中に将来の多くの可能性もが詰まっているという考えを学びました。ラングロワなしに、ヌーヴェルヴァーグは存在し得なかったとさえ言えます。
HK 
 同時にアンドレ・バザンも重要だったのではないですか。
JD 
 バザンも重要でした。しかしながら、バザンは伝統の中にいました。バザンは、伝統的な映画を語ることには非常に長けていました。そうであるからこそ、欠くことのできない存在でした。しかしながら、彼は伝統の中にとどまり続けていました。例えば、バザンはどうして私たち若い世代が、急にヒッチコックを好きになったのか理解することはできませんでした。バザンにとってのヒッチコックとは、その時代に多くの人が考えていたように、商業的映画を作る映画作家にすぎませんでした。ヒッチコックだけではなく、ホークスに関しても同様です。バザンには理解することのできない作家でした。
HK 
 バザンはウィリアム・ワイラーのような作家を好んでいたのですよね。
JD 
 言われたとおりに、バザンはワイラーを好んでいました。それほど複雑な理由ではなく、ワイラーは伝統に属する作家だったからです。それも伝統的な良い映画を作っていました。別の言い方をすると、ワイラーとは良質の映画作家です。しかし何かを創造する作家ではありません。

〈次号へつづく〉
(聞き手・写真提供=久保宏樹)
2018年2月9日 新聞掲載(第3226号)
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