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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
2018年2月13日

アホらしく、笑えて、泣けて、愛おしい芸人たちの物語
第135回芥川賞 又吉直樹著「火花」(2015年)

火花
著 者:又吉 直樹
出版社:文藝春秋
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火花(又吉 直樹)文藝春秋
火花
又吉 直樹
文藝春秋
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「文學界」2015年2月号に掲載された第135回芥川賞受賞作品。

著者は、人気お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹氏。『火花』は芥川賞受賞作品のなかでの累計発行部数も歴代一位と、とても話題になった作品だ。

売れない芸人徳永は、熱海の花火大会のライブで先輩芸人神谷と出会う。そこで徳永は神谷の芸風、人柄に惹かれ弟子入りする。その条件として、伝記が好きで、みんなを驚かせたい、という神谷の願いから、神谷の伝記を書くことになる。共に過ごす時間が多くなっていき、師弟関係のなかが深まっていく二人。二人それぞれの芸人生活を芸人の目線で、温かく描いた純文学作品。

『火花』は、テレビなどのメディアでも注目されて、本屋さんも、一時期棚が『火花』だらけになっていた。私も買ってみようと思ったが、又吉といえば、あの落ち武者のようなロングヘアに目つき、太宰治を愛する本好きなイメージ。相方、綾部と結成しているコンビ「ピース」での妖怪と男爵というネタは独創的で面白く、とても印象に残っている。そんな芸人又吉直樹! という事で、文章が固く読みづらい本だと思ってしまい、買うことを躊躇っていた。しかし、図書室に『火花』が入ってきたので読んでみると、思っていたよりも読みやすく面白かった。

他の小説とは違い、印象的だったのはとても現実味があったことだ。特に面白いと感じたのは、ライブの漫才のシーン。大阪弁のボケとツッコミの掛け合い、お客さんとの距離、なにより、漫才の内容が面白かった。芸人が描いただけあって、ボケ、ツッコミ、オチがあり、小説を読んでこんなに笑ってしまったのは初めてのことだった。

みんなが笑ってくれると思ってシリコンを入れ巨乳になって現れた神谷に「なにしてんねん」と冷静にツッコミをいれ、「ほんまに、あほや。どないしよう」という掛け合いなどは、とてもリアルにお笑いを見ているようで笑ってしまった。漫才シーンも面白いだけじゃない。徳永のコンビ解散前、最後の漫才は感動的なシーンだった。

芸人生活を送ってきた著者だからこそ描ける芸人の心情は、『コンビニ人間』や『苦役列車』と同様に、やはり、ほかの仕事をしている人には描けないものがある。下積み時代や師弟関係といった芸人独特の関係があり、芸人生活というあまり普段触れられない内容にも現実味が強く沸く。さらに“芸人”という存在は少し特別な感じもする。江戸時代から民衆に親しまれ、現在でも、テレビや舞台で多くの人達を笑わせて、長い間私たちに欠かせない存在である。学校でも話題の中心は常に彼らだ。

『火花』は映画化、ドラマ化もされた。漫才という日本独自の笑いの文化、芸人の生活を、芸人自らの目線で描いた、アホらしく、笑えて、泣けて、愛おしい芸人たちの物語だ。


【おまけ】
「映画観に行ったら、火花のポスターみつけた」

この記事の中でご紹介した本
火花/文藝春秋
火花
著 者:又吉 直樹
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
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