田原総一朗の取材ノート「「生前退位」の特別措置法」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
哲学からサブカルまで。専門家による質の高い書評が読める!

▲トップへ

  1. 読書人トップ
  2. コラム
  3. 田原総一朗の取材ノート
  4. 田原総一朗の取材ノート「「生前退位」の特別措置法」・・・
田原総一朗の取材ノート
2016年9月23日

「生前退位」の特別措置法

このエントリーをはてなブックマークに追加
天皇の、八月八日の「お気持ち」表明が、政界でも、学者の世界でも、もちろん国民の間でも大変な話題になっている。

天皇は非常に慎重に言葉を選びながら、「生前退位」を国民に訴えたのである。
私は、一九四五年八月一五日の、昭和天皇の「玉音放送」を聴いている。軍の幹部はあくまで、本土決戦を主張していて、昭和天皇は生命の危険に曝されながら、懸命に「戦争を終える」と国民に訴えたのであった。

八月八日の「お気持ち」表明に、私は、昭和天皇の「玉音放送」に劣らない重さを感じていた。
七月一三日の七時のニュースが、天皇が生前退位の意向を示している、と報じたのに対して、保守右派の学者や政治家たちの多くは、「生前退位」に反対の意見を表明した。

天皇は、そうした状況を百も承知で、国民に直接、その言葉は使わなかったが、慎重に生前退位を訴えたのだった。

その一ヶ月後、九月八日の朝日新聞が、一面トップで、「生前退位 特措法で」と報じた。
「政府は将来の退位を強くにじませた天皇陛下のお気持ち表明を受けて、いまの天皇陛下に限って生前退位を可能とする特別措置法を整備する方向で検討に入った」

正式に皇室典範を改正しようとすると、時間がかかって、いまの天皇のお歳を考えると間に合わない恐れがある。だから特措法でやる、ということのようだが、天皇のお気持ち表明の文章を点検すると、天皇はあきらかに、正式の皇室典範の改正を望んでいらっしゃるのである。

そして、正式の皇室典範となると、当然ながら、女性天皇、女系天皇の問題、さらに、女性宮家の問題を検討しなければならない。

女性天皇、女系天皇の問題は、小泉内閣で取り上げられて中断しており、女性宮家の問題も、民主党の野田内閣が取り上げて中断している。もしも、政府が、こうした問題を検討するのを回避するために特措法を選ぶのだとすれば、天皇のお気持ちに反しているといわねばなるまい。
2016年9月23日 新聞掲載(第3157号)
このエントリーをはてなブックマークに追加