『ここは、おしまいの地』(太田出版)著者・こだまさんインタビュー  「おしまいの地」から、ささやかな問いかけになるような作品を|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!
▶メールマガジン登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

読書人紙面掲載 特集
2018年2月25日

『ここは、おしまいの地』(太田出版)著者・こだまさんインタビュー 
「おしまいの地」から、ささやかな問いかけになるような作品を

このエントリーをはてなブックマークに追加
衝撃の私小説『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)から一年、こだまさんのデビュー二作目となる短編集『ここは、おしまいの地』(太田出版)が刊行された。

本作は『QuickJapan』に掲載された読み切りエッセイと連載「Orphans」をもとに大幅に改稿。登場するのは、老衰パンダと化した父、雷おばさんだった母、偽エグザイルや病院仲間の「脊椎組」といった面々のみならず、猛烈な臭気を放つ残汚の家、昭和のモンスターや守護霊集団のいる街、さらには身体の中から“骨のかけら”が忽然と消えてしまう事件まで、著者がこれまで巻き込み巻き込まれてきた“ちょっと変わった”人生のかけらを集めたエッセイ集となっている。著者のこだまさんにお話を伺った。 (編集部)
第1回
デビュー作『夫のちんぽが入らない』

■「気が付くとブログにもコラムにも故郷のことばかりを綴っている。」(「ここは、おしまいの地」)

――デビュー作『夫のちんぽが入らない』が、大変な反響を呼びました。今回の短編集では、こだまさんをかたちづくってきた環境や影響を与えた人々に焦点を当て、前作出版以降の状況も含めて、こだまさんの世界が広がったような印象を受けました。

表題作の「ここは、おしまいの地」はいわば、こだま前史。奇怪な祭りと化したハロウィンや不審者の侵入だけでなく、実演販売やオレオレ詐欺の「さしこ」まで、集落はやられ放題ですが、特におばあちゃんが誘い出されて四〇万の健康器具を買わされた話にはじわじわと怒りが……。不審者に侵入されたときのお父さんの謎の言葉は、やっぱり狐だったのでしょうか?

こだま 祖母は「家族に内緒で来てね」という、いかにも怪しい言葉で農協のクヌギの樹の下に呼び出され、敷物の上に並べられた高価な健康器具を買わされて帰ってきました。祖母がションボリしていたことよりも、クヌギの下で販売する光景が未開の地そのもので、そっちの方が印象に残った。父は不審者が家に侵入した翌朝「狐が紙飛行機を飛ばしている」と謎の言葉を残して裏山の方へふらふらと歩いて行きました(笑)。狐に化かされたのでしょうか。謎です。そんな「日本昔ばなし」に出てくるような地で一八年間育ち、思い出のひとつひとつが身体に刻まれてきたことが、ものの見方や考え方のもとになっています。

■「体内にパワースポットが誕生していた。小さな聖域を設けてもらったのだ。参拝してもらう側になってしまった。」(「私の守り神」)

――「私の守り神」には、アフリカの祈祷師みたいなことを言う医師、「脊椎組」のばあさん連、偽エグザイル、神々しいばかりの中学生など、ここでもユニークな面々が登場します。そして、辛い闘病体験がまるで生まれ変わるための試煉だったかのように遂には自身が参拝される側になってしまうという逆転劇が起こる。カバーを外した本の表紙には、こだまさんの“聖域”が写し出されたレントゲン写真が使われているという特典付きで(笑)。

こだま 同室の中学生は退院するとき全員に手紙をくれたんです。私には「大変なこと、これから沢山あると思いますが、頑張ってください!」と。どちらが年上かわからない(笑)。入院中ずっとノートに日記をつけていました。特に手術して最初の一週間は痛過ぎて動けず、書くことが現実逃避になっていたのだと思う。テンポよく華麗に巡回する男性看護師を「偽エグザイル劇場」と書いたりして、「この入院には面白いこともあるんだ」と自分の置かれた状況を楽しもうとしていたんでしょうね。残念ながら移植した骨が消えるという、ちょっと不吉な結末を迎えるのですが……。辛かったり嫌な思いもあったはずなのですが、書いてみると貴重な体験ばかり。悲惨な出来事ほど軽やかに書いていこうと思っています。

2 3
この記事の中でご紹介した本
ここは、おしまいの地/太田出版
ここは、おしまいの地
著 者:こだま
出版社:太田出版
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年2月23日 新聞掲載(第3228号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
人生・生活 > エッセイ関連記事
エッセイの関連記事をもっと見る >