【横尾 忠則】生涯、模索、モサクの連続 拾得(じっとく)ニタリと逃げていく|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年3月13日

生涯、模索、モサクの連続 拾得(じっとく)ニタリと逃げていく

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ヒキガエルと女 2017年/キャンバスに油彩/1000×727mm
2018.2.26
 2日間爆睡したせいか昨夜のレンドルミンは効果ゼロ。一番こたえるのが不眠。翌日ぼんやりするだけでなく古傷の骨折までうずく。不眠の原因はほぼメンタルのせいだ。

長い模索期を経て、様式を決定して円熟期を迎えるなんて、僕には無縁。生涯、模索、モサクの連続で終りたい。気持のどこかで評価につかまるのを恐れて逃げ廻る、森鴎外の「寒山拾得」の最後で拾得がニタリと笑って逃げていくあの姿を重ねたい。

2018.2.27
 ここはロスのディズニーランド? 最近の画家の作品には真のエロティシズムが欠如している、借り物ばかりだ。そこでマリリン・モンローがお相手して、眠る画家のエロスを引き出して参じましょう、とその栄光にあずかった私。「下半身はダメよ」、とダメ押しされる。何しろ相手は世界のセクシー女優No.1、きっと高価な香水に包まれて、なんて妄想していたら、何のことない田舎娘の腋から滲む汗の匂い(臭覚)。そんなモンローはあのウェッセルマン描く(視覚)白痴口唇を大きくあけて、「クスグッタイ、クズ具体」(触覚)と叫ぶ(聴覚)。これがモンロー式バーチャル・ハラスメントだという。残念ながら総天然色ではなく白黒でありましたが、突然モンローはカラーに変色して「焼肉(味覚)を食べに行きましょう」と実在しない成城学園前の焼肉屋へ、わからん男と妻の四人で行くことになった。夢の五感表現こそ画家に欠如しているエロス?

風邪気味で厚着して暖房がんがんかけたためか、熱っぽい。そこでどんどん脱いでいくと熱が下った。

2018.2.28
 書評の予定の本を読む。お仕事の読書はストレスになって歯まで痛む。お勉強のための本もストレスになる。読書は無目的に限る。

2018.3.1
 川西浩史君、ニューヨークでシルクスクリーン工房を開設と意気込んで行ったが、止めたのか帰ってきた。彼はいつも自転車でやってきて、今から銀座まで自転車を漕ぐという。なんでも毎日自転車で銀座を往復しているという老人になれそうにない70代。

今日はスポーツマッサージへ。これがよく効いて施術中からイビキをかいて眠っていたそうだ。

2018.3.2
 午後9時45分にトイレにいって床に着く。次に醒めたのは午前3時半。トイレに行く。ドアを開けると便器はひっくり返り、トイレ内はまるでポルターガイスト状態だ。何もかもが破壊された状態。妻を呼ぶと、彼女はこの情景にさほど驚かないで、そのまま黙って自分の寝室へ。一体何が起こったのかサッパリわからない。明朝、早速警察に☎して調べてもらいたい。次にトイレに行ったのが午前5時過ぎ。ドアを開けるとさっきの異常な光景はない。どこが夢でどこが現かよくわからない。どっちだっていいけど。

大阪の吉本興業がオープンする新しい劇場のコケラ落としのポスターの打ち合わせと、舞台美術の一部に僕の様々なイコンを組み合わせた舞台の制作の依頼。さてこちらの方は引き受けるかどーかは未定。大阪を訪れる外国人対象の舞台だが、ハッタリやごまかしを利かせた邪道がコンセプトの「外連(けれん)」だと。

見そこなった「入江一子100歳記念」展のカタログを「美術の窓」から恵贈される。100歳の老画家だから描ける児童画のような油彩画の不思議な神秘は現代美術が見捨てたもの。

今日からスクワットを始めた。

2018.3.3
 今日は初夏のように気温が高い。庭のメダカが極寒期を越冬して無事によく生き延びた、ご苦労さん。

アトリエは地中海のような温暖。バルコニーに出ると蒼い海の彼方にアフリカ大陸。天使の羽のようなビーチの先には火を噴くベスビアス火山。仮眠から醒めると首が痛い。

テレビで主人が亡くなったあと黒い大きい愛犬が真白になってしまった。犬の心が読めるという米国の霊能者によると、主人と遊んだ時のフリスビーと主人の匂いのついた赤いコートと、主人との散歩を懐かしがっていると。家族が犬の要求を果たしたら見る見る元の黒犬に戻った。犬が凄いのではなく人間が文明の下僕になっただけのこと。

成城の駅前で椎名誠さんに会うと「バスの中で毎日のように山田洋次さんに会うけれど一度も言葉を交したことがないんです」と。僕もそうだったけれど、ある日隣り合わせで座った時、レモンを差し上げたら、それ以来親しくなったと話したあと、駅のホームの売店で新聞を買っている時、「健康堂のツツイです」と声を掛けた男がいた。どうやらマッサージを予約していたらしい。

2018.3.4
 南方の森林が伐採され壊滅状態だが、その100%が日本への輸出だというテレビを観たあと、今朝の1頁広告ではS林業が23年後に都市のまん中に70階建ての木造超高層ビル計画を「宣言」している。「地球環境保全による未来へ向うため」と言う。まさか他国の森林を伐採した木材を使用するというわけじゃないだろうな。この計画以前に日本国土森林化実現が先だと思うよ。(よこお・ただのり=美術家)
2018年3月9日 新聞掲載(第3230号)
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