川北天華(2009) 問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2018年3月13日

問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい
川北天華(2009)

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数学の問題文の文体を借りながら、詩的イメージを構築してみせた一首である。作者は作歌当時高校生であり、大森静佳によると「高校生文芸道場おかやま2009」作品集が初出だという。この歌を誰かがtwitterで引用したところどういうわけだかリツイートをされまくり急激に広まった。この状況に歌人の多くは困惑した。その理由は、テストの問題文をパロディにした現代短歌というのは「やなことがあって季節の花が咲き 問1なにが咲いたでしょうか」(斉藤斎藤『渡辺のわたし』)など、前例がいくらでもあったからである。とりわけ短歌は学校教育が強力なインフルエンサーとしての役割を果たしてきたジャンルだけに、学校独特の文体をパロディの元ネタに選ぶのはいわば王道中の王道だった。つまり歌人の目にはそれほど斬新な方法ではなかったが、大衆的には「今まで見たことがない斬新な短歌」だったのだ。作者が高校生であるという情報が異様な追い風を吹かせたのだろうが、現代短歌の方法が多様でポップであることがまるで知れ渡っていなかったという事実を再認識させてしまった一種の「事件」だった。

パロディは昔から続く短歌の王道の技法であり、その根底には「誰でもできる気軽な言葉遊び」という短歌の本質がある。その本質を伝えるための方法として、掲出歌をはじめ「問題文パロディ短歌」は、教育現場に登場させると有効な手段なのかもしれない。つくづく短歌は、誤解されやすい詩型だ。
2018年3月9日 新聞掲載(第3230号)
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