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漢字点心
2018年3月20日

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幻の名作なるものは、幻になるだけあって、実際に読んでみると当たり外れが大きいものだ。ぼくにとって、当たりの方の例が、フィリップ・マクドナルドの本格ミステリ『鑢』。高校生のときに創元推理文庫で買って、けっこう楽しんだ記憶がある。

その文庫の背に、ごていねいに「鑢(やすり)」と印刷してあったのも、頭の片隅に焼き付いて離れない。「鑢」は、たしかにむずかしい漢字だ。でも、翻訳小説なのだから、わざわざ背にまで読みがなを付けるくらいならば、いっそ、ひらがなのタイトルにしてもよかったのではないか。漢字の方が作品のイメージに合う、というような事情でもあったのだろうか。

そのこだわりの理由はともかく、おかげで、ぼくは「鑢」という漢字を難なく覚えることができた。どんなにむずかしい漢字でも、印象に残る使い方に出会えば、一発で頭の中に入ってしまう。漢字のおもしろさとは、そんなところにもあるのに違いない。
2018年3月16日 新聞掲載(第3231号)
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