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2018年3月30日

今はただ石牟礼さんのご冥福を祈るばかり

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石牟礼道子氏の『苦海浄土』は、読むほどに胸が苦しくなってくる作品である、だが同時にそこに綴られている言葉の美しさに胸が打たれもするのである。二〇一一年、河出書房新社の「世界文学全集」にその『苦海浄土』全三部作が一巻にまとめられて収録されたのを機に、インタビューのために熊本市内の石牟礼さんのご自宅をお訪ねした。向かいに座る石牟礼さんは、柔らかな微笑みを絶やすことなく、こちらの拙い質問にも真摯に答えてくれた。決して折れないしなやかさと、天と地を結ぶ陽の光のようにすっと一本の筋が身内を貫いている人。そんな印象を持った。わずかに二時間もないほどの短い間ではあったが、筆者にとっては非常に緊張しつつも至福の時間であったことを今も思い出す。構想はあると言っておられた『苦海浄土』の第四部がもし書かれていたとしたら、どのような作品になっていたのだろうか。そのことはもう知る由もない。今はただ石牟礼さんのご冥福を祈るばかりである。

(O)
2018年3月30日 新聞掲載(第3233号)
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