知性は死なない 平成の鬱をこえて 書評|與那覇 潤(文藝春秋)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年4月7日

與那覇 潤著 知性は死なない

知性は死なない 平成の鬱をこえて
著 者:與那覇 潤
出版社:文藝春秋
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「知性は死なない」――インパクトのあるタイトルである。そして副題には「平成の鬱をこえて」とある。著者は二〇〇七年から二〇一五年まで地方公立大学で教鞭を執り、『帝国の残影』などいくつかの書物を著わしてきた日本近代史研究者である。著者自らが躁うつ病(双極性障害)をわずらい、「いちどは知的能力そのものを完全にうしない、日常会話すら不自由になる体験をした」(14頁)。そこからの回復過程で、「真の知性」とは何か、あるいは「知識人」とは何かについて考えた一冊である。一章~三章までは、自分自身の体験を踏まえながら「うつ/うつ病」に関して論じる。書名に引きつけられた読者であれば、まずは四章「反知性主義とのつきあいかた」、五章「知性が崩れゆく世界で」から紐解くのがいいかもしれない。まず四章では、日本および世界における「反知性主義」の問題を考える。この言葉が「濫用」されたことによって、本来の意味が曲解されてしまったと批判しつつ、「「現時点での正統派」にたいする無限の挑戦。これが、もともとの意味でいう反知性主義の本質」だと述べる。既存の「権威」に常に異議申し立てをしていくのが「反知性主義」(著者の言葉で言えば「反正統主義」)なのである。また本章で興味深いのは、大学教員の経験に基づいた「大学論/大学批判」の部分である。「大学で学べるいちばん大事なこととはなにか」ということに対して、いくつかの具体的な提起をする。最終的な目標となるのは、権威に阿り自らの信条さえもあっさり翻す、事実に基づかずに他人を糾弾するようなあり方に対して、それを「知性を欠いたもの」として判断できる、そうした目を養うことである。つづく第五章の主要な論点は「リベラルの衰退」。なぜリベラルが世界的に没落したのかを、世界史的な視野をもって振り返る。本書全体の通奏低音となっているのは、「言語と身体」という対立軸である。結論的に著者は、決して今の時代を悲観してはいない。「世界が混迷を深めるなかで(中略)知性がもういちど輝きはじめるときだと、信じている」(281頁)。この言葉を受ければ、知性の力を信じる人たちすべてにおくる「希望の書」なのである。 (A)
この記事の中でご紹介した本
知性は死なない 平成の鬱をこえて/文藝春秋
知性は死なない 平成の鬱をこえて
著 者:與那覇 潤
出版社:文藝春秋
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2018年4月6日 新聞掲載(第3234号)
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