対談=樋田 毅×永田浩三 記者人生を掛けた赤報隊取材 樋田毅著『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年4月13日

対談=樋田 毅×永田浩三
記者人生を掛けた赤報隊取材
樋田毅著『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)刊行を機に

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一九八七年五月三日、朝日新聞阪神支局が散弾銃を持った目出し帽の男に襲撃された。それにより小尻知博記者が射殺され、犬飼兵衛記者が重傷を負った。
「日本民族独立義勇軍別動赤報隊」と名乗るグループによる犯行は三年四ヶ月の間に計八件起き、解決することなく二〇〇三年三月に公訴時効を迎えた。
未解決事件としてジャーナリズム史上に深く傷を残している。この一連の事件を三〇年にわたり追い続けた樋田毅氏。著書『記者襲撃』の刊行を機にジャーナリストの永田浩三氏との対談をお願いした。 
(編集部)
第1回
自分の思い描いてきた犯人像を書く

永田 浩三氏
永田 
 樋田さんは三〇年にわたり一九八七年に起きた赤報隊による阪神支局襲撃について追いかけておられます。その取材は今も続き記者人生のかなりの部分が費やされています。放送と新聞の違いはありますが、ジャーナリズムに関わる者として一文字一文字一行一行おろそかにせず、時には涙し震えながら読み、深い感銘を受けました。今の日本のメディアがおかれた状況を確かめる上で記念碑的な作品だと思います。よくぞ世の中にこの本を出していただいたと、感謝の気持ちがあふれました。

赤報隊事件については、今年一月にNHKスペシャル「未解決事件シリーズ 赤報隊事件」として二夜連続で再現ドラマとドキュメンタリーとして放送されました。本を読むと、あの番組は樋田さんの長年の取材のほんの一部分であることがわかりました。本を出されて反響はいかがですか。
樋田 
 ノンフィクションですから私が真実であると思ったことを書いています。まわりからは、「三〇年の思いが詰まっている」「中身の濃い重い本だ」と言われました。読まれ方はそれぞれですね。前半の新右翼に焦点を当てて読まれる方、或いは後半の宗教団体に焦点を当てて読まれる方、或いは安倍首相の朝日新聞に対する発言と赤報隊事件を繋げるような読み方をされる方もいました。事件は未解決ですから、犯人像がわかるような断定する書き方はしていませんし、慎重な書き方をせざるを得ませんでした。しかし慎重に書いたことがよかったと思っています。NHKのドラマでは草彅剛さんが私の役をしてくれました。だから草彅さんのファンからも本を読んだ感想が寄せられるようになりました(笑)。一般の方にこそ読んで欲しかったのでよかったです。
永田 
 樋田さんが想定していた読者よりも幅広く読まれているんですね。記者として執念を持って一つのテーマを追いかける取材はこういうことなのかと考えさせられました。この本で頁の色が変わっている部分があります。その第一部第二章「犯行の経過」については、樋田さんが追いかけてこられた赤報隊による阪神支局襲撃事件の核となる部分に踏み込まれていますし、ここだけは小説の形式をとっておられますよね。
樋田 
 その章は物語仕立てで書いています。登場人物については六〇歳代の男と三〇歳代の実行犯の二人組を設定していますが、確証はありません。そのように考えると一連の事件の流れが理解できるのではないか、と長年考えてきたことを書きました。

はじめは物語仕立てで書いていいのか迷いましたね。客観的に書きはじめたのですが、知人からは「三〇年も前の話だから、この事件について知っている人は少ない」と言われました。それで事件を知らない人に伝えなければいけないと思い、自分の思い描いてきた犯人像を設定し書きました。

物語に出てくる犯人の一人は、少なくとも戦前の体制に郷愁を持っている人物です。それは犯行声明文に書かれた年号を西暦ではなくて皇紀にしていることからも明らかです。戦後の日本を全否定して、「反日朝日は五十年前にかえれ」と書いているので強烈な想いがあるだろう。一方で犯行声明文を順番に読むとわかるのですが、五度目のリクルートの江副邸への銃撃事件(一九八九年八月一〇日)、六度目の愛知韓国人会館への放火事件(一九九〇年五月一七日)の犯行声明文は趣旨が違っています。これは書き方も内容も違うので複数の人間が書いていると以前から思っていました。一連の犯行は同一グループであることは証拠から明らかです。本には書きませんでしたが犯行声明文の脅迫状は全部同じ折り方です。非常に几帳面に折られていました。しかも同じ紙です。これは犯行当時の報道には一行も書かれていません。にも拘らず同じ折り方をしていることを考えると、同一グループである可能性が高い。そして江副邸銃撃と阪神支局襲撃では同じ散弾が使われています。

銃撃や時限爆弾、放火と犯行形態が違うけれど、同一グループ内で、かつ文面が違うとなると若者と年輩者で一連の事件は実行されたであろうと想定しました。もちろんその想定が間違っているかもしれませんし、断定はできません。
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この記事の中でご紹介した本
記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実/岩波書店
記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実
著 者:樋田 毅
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年4月13日 新聞掲載(第3235号)
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