日本メディア史年表 書評|土屋 礼子(吉川弘文館)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2018年4月21日

1837年から始まるメディア史 
技術革新の普及を編年体で一覧

日本メディア史年表
著 者:土屋 礼子
出版社:吉川弘文館
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辞典・字典、事典は引くものか、読むものか――と問われたら何と答えるだろうか。前者はdictionary、後者はencyclopedia。両書とも調べものには欠かせない書物だ。そして年表はchroniclechronology。平たく言えば、年代史、編年史、歴史上の出来事を年代順に記すことである。

本書は「一八三七年~二〇一五年までの「メディア」に関する日本および東アジア・西欧の記事を……まとめたものである」(凡例から)。対象とするメディアを従来のマス・メディア=新聞、出版、放送、映画などから、コミュニケーション・メディア(メッセージの媒介に関わる社会システム、装置)に広げている。郵便、ビラや看板などを含めての広告(会社)、電話(携帯電話の普及)、SNS、写真、ビデオ、パソコン、IT、メディア企業の発足や動向、そしてそれらを取り巻く出来事を詳細に掲げ、言い換えれば技術革新の普及を編年体にまとめて一覧できる書である。代表的な映画・文学作品名写真なども入っている。

特徴的なのは「時代が身近に感じられ、メディアと社会の関係がわかる」四〇余りのコラムであろう。「通信社の始まり」から「SNSと政治参加」まで多種多彩だ。

本書は一八三七年から始まる。E・モールスが電信機(電気通信機)を実用化したとされる年である。

それゆえ、読者は「電気通信技術の社会化から始まるメディア史」であることを念頭に置いて欲しい。

ところで、歴史年表はどう使われるのだろうか、と考えてみた。まず本書のようにメディアに関する事象について、いつ、どこで(when/where)誰(who)により、何(what)が起きたかという5W1Hの主要部が柱であることが共通する記述である。何故(why)、どのように(how)までになるとこの範疇をこえ、事物の詳細を記載する事典(「ことてん」とも称する)になってしまう。とすると、本書を手にする読者は初学者であり、いわゆるレファレンス(参考書)として図書館などに配架されることも理解できる。ただ、多岐にわたるメディアと社会事象との示し方に多少の工夫が必要ではないか。

ここまでは事実の確認をする作業として歴史年表が手元にあると、それこそ、引く、調べる参考書として有益である。

次は読み物として本書を紐解くと、どうだろう。一頁一頁をめくる中で、特定メディアを時系列的に探ること(垂直思考)と関連事象を探ること(水平思考)は点を結び、線を作るのはなかなか難しい作業である。それだけの知識があってのうえでないと読みこなすことは出来ないだろう。それを補完する意味で「コラム」がある。

これまで刊行された類書――内川好美・稲葉三千男編『マスコミ用語辞典』(東洋経済新報社、一九八二年)やB・フランクリン/M・ハンナ編『ジャーナリズム用語事典』(国書刊行会、二〇〇九年)、渡辺武達・山口功二・野原仁編『メディア用語基本事典』、世界思想社、二〇一一年)などと併せて読むと、新しい発見があるかも知れないと期待できる書である。
この記事の中でご紹介した本
日本メディア史年表/吉川弘文館
日本メディア史年表
著 者:土屋 礼子
出版社:吉川弘文館
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年4月20日 新聞掲載(第3236号)
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