ゲイカップルのワークライフバランス ――男性同性愛者のパートナー関係・親密性・生活 / 神谷 悠介(新曜社)分かち合いから見えてくる仕事と家族|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年5月15日

分かち合いから見えてくる仕事と家族

ゲイカップルのワークライフバランス ――男性同性愛者のパートナー関係・親密性・生活
著 者:神谷 悠介
出版社:新曜社
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文明の崩壊に関する考察を行ってきたジャレド・ダイアモンド博士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)によると、人類がかつて経験してきた文明崩壊には環境問題が深く関わる。こうした環境問題への対処方法は、政治、経済、文化的要素によって左右されるという。例えば、1300年代後半から1400年代に気候が寒冷化したグリーンランドにおいて、イヌイット族は気候変動にうまく適応したが、ノース人は適応できなかった。ノース人は、教会に多額の資金をつぎ込むキリスト教への傾倒や、競争意識の強い族長社会、イヌイットへの蔑視という文化的要素によって、問題への対応が難しくなった。イヌイットから学ぼうとしなかったのである。

ダイアモンド博士の論考は、文明崩壊を引き起こした環境問題に関するものであるが、現代日本における仕事と家族に関する問題と、セクシュアル・マイノリティにも似たような関係が当てはまるかもしれない。

昨今、長時間労働や、仕事と家庭の両立など職業生活と家族生活に関する課題が取り沙汰されている。こうした課題への施策として、一昔前はファミリーフレンドリーが注目された。これは従業員の家庭的責任への配慮を指す。ファミリーフレンドリー施策によって、既婚者は制度の対象となる一方、未婚者や同性愛者からは「なぜ、既婚者のみが優遇されるのか」という不満が噴出するようになった。そこで登場したのが、すべての従業員を対象として、仕事とそれ以外の生活の調和を図るワークライフバランスである。

しかし、ワークライフバランスに関する議論も従来の家族を前提とするきらいがある。ワークライフバランスが登場した経緯を踏まえるならば、ワークライフバランスに関して、様々なマイノリティが抱える問題も扱う必要があるのではないか。こうした関心から、拙著『ゲイカップルのワークライフバランス』を上梓した。

働き方改革が叫ばれ、長時間労働の是正や、仕事と家庭の両立が課題となる中、政府も社会も研究者もそうした課題に対処できるような家族のありようを提示することに失敗し続けてきた。拙著では、ゲイカップルにおいて家事や余暇活動のシェアを通じて、一体感が生じていることから、こうした関係性を<分かち合う親密性>として位置付けた。現代社会では、セクシュアル・マイノリティへの蔑視が払拭しきれておらず、あえて働き方に関して、マイノリティを通して考える人はあまりいない。しかし、現代的な課題に対応しつつ、従来の家族とは異なる親密なパートナー関係を形成するマイノリティから多くを学ぶことができるのではないだろうか。
この記事の中でご紹介した本
ゲイカップルのワークライフバランス ――男性同性愛者のパートナー関係・親密性・生活/新曜社
ゲイカップルのワークライフバランス ――男性同性愛者のパートナー関係・親密性・生活
著 者:神谷 悠介
出版社:新曜社
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2018年5月11日 新聞掲載(第3238号)
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