AIに心は宿るのか 書評|松原 仁(集英社インターナショナル)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2018年5月12日

AIの現在地点を知る 
視点を共有すれば好奇心がわいてくる

AIに心は宿るのか
著 者:松原 仁
出版社:集英社インターナショナル
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「松原さん、この一年間、私は将棋よりもAIの仕事のほうが多いんですよ。」本書で著者と対談する羽生善治は笑う。AI(人工知能)が人間を圧倒しつつある今、誰もがAI社会での振る舞い方を知りたいと思っている。人類史上初の「知の敗北」を最も早く経験しているのが今の将棋界であり、それを一身に負って立つ羽生は、AIとの付き合い方をいま最も真剣に考えている一人である。

そして著者の松原仁は、AIが注目されなかった「冬の時代」から一貫して、AIに深く携わってきた一人である。研究者たちは、いわば人類の「自分探し」として、人間の知能とは何かを突き詰め、人間と区別がつかないようなAIを作ろうと夢見てきた。

AIはどのくらい人間に近づいたか。チューリング・テストといわれる基準がある。壁の向こうのAIと会話をして、人間と区別がつかなければ合格というものだ。このテストには2014年に「ユージーン・グーツマン」という13歳の少年として設定されたAIがもう合格している。

かつてAIは、人間の指示した通りのことしかできないといわれた。しかし現代のAIは、人間に何も教わることなく、過去に例のない「創造的」な手をどんどん繰り出し、囲碁でも将棋でもプロに圧勝する。AIが何を考えているのか、もはやAIの作者にも理解できない。

AIには人間と違い心がないといわれるが、そうとも限らない。心とは、人間が「心の存在を仮定したほうが便利」と思うときに生じる知能の働きであると著者は説く。本書には、AIが独力で書いて星新一賞の一次選考を通過した小説「コンピュータが小説を書く日」の全文が収録されている。これを読んで書き手の心の動きを感じたならば、読者にとってAIには心があるといってよいことになる。

ではAIはもう人間を超えたのか。著者は「汎用性」の点でまだまだ及ばないと考えている。AIは特定のパターンへの対処に優れているが、未知の問題に弱い。初めて直面する状況では、あらゆる情報を処理しようとして、逆に問題が解けなくなってしまう。いっぽう人間は、必要な情報だけを適当に「枠」で囲って使うことができる。この未知の状況への対応能力こそ、種の保存を有利にしてきた、人類の知能の本質であるというのだ。

AIの現在地点を知り、AIと向き合う賢人たちと視点を共有すれば、盲信や恐怖が解け、好奇心がわいてくる。それはAIとしなやかに付き合う最良の方法だろう。
この記事の中でご紹介した本
AIに心は宿るのか/集英社インターナショナル
AIに心は宿るのか
著 者:松原 仁
出版社:集英社インターナショナル
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年5月11日 新聞掲載(第3238号)
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