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誰も見ていないから
2016年10月14日

誰もみていないから ⑰ 

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〈Beautifalmindseries〉(鉛筆・越前和紙/2012年) ⒸShinjiIhara

「絵を描くためにアルバイトをしているんだから。」

ある日、新宿駅の近くでランチをしていた時に友人がそう言った。その場は流してしまったが、妙にその一言が胸に引っかかってしまった。その友人は画家ではなかったが、絵描きをしている恋人と一緒に暮らしている。私は、同世代で自分と同じように芸術に携わる仕事をしている人とパートナーとの生活に興味があった。

その時の私は、絵を売って生活できなければ画家ではないと思っていたから、友人の考えが少し腹立たしかったのだろう。絵を描きながら生活するためにアルバイトをするのは普通のことかもしれない。そもそも生活なしに絵は描けないのだから、私の考えが道理にそぐわないことぐらい分かっていた。でも、それが画家という職業だと思っていたから、試してもいないのに出来ないと考えているようにしか思えてならなかった。

「生活が苦しかった時は、パートナーに助けてもらってでも絵を描き続けた。」と、ある人が言っていたのを思い出した。画家になることなど針の筵に自分から踏み込んでいくようなものだから、人と同じことをしていてもしょうがない。
「絵を描くためにアルバイトはやらないんだから。」
2016年10月14日 新聞掲載(第3160号)
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