札|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

漢字点心 第201回
2016年10月14日

このエントリーをはてなブックマークに追加
一〇月一四日は、日本で初めて鉄道が開業した「鉄道の日」。そこで、鉄道に関する話題を取り上げてみよう。

鉄道に乗るためには、券売機で切符を買って、改札口を通る。ごくごく当たり前のことだが、漢字的には、これがなかなかおもしろい。「切符」を売る機械なのだから「符売機」とでも言えばいいのに、そんなことばはない。乗車券を改めるのであれば「改券口」になりそうなものだが、ふつうはそんなことばは使わない。つまり、われわれは、鉄道に乗るためのあの紙切れを指して、少なくとも三つの呼び方を使い分けているのである。

そのうち、最も日常性が高いのは「切符」で、「券」はオフィシャルな雰囲気。よく用いられるこの二つに対して、「札」は、「改札」と「検札」くらいでしか使われない。むしろ、「千円札」のように「紙幣」を指す方が一般的だろう。だからといって、だれも改札口で財布の中身を見せようなどと思わない。ことばとは不思議なものである。
2016年10月14日 新聞掲載(第3160号)
このエントリーをはてなブックマークに追加