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漢字点心
2016年10月21日

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「びわ」は、西の方からシルクロードを通って中国に伝わった楽器。ピンパンと聞こえるその弦の響きを、中国の人びとはそのまま名前にしたらしい。「琵」と「琶」は、その名前を書き表すために作られた漢字。だから、他の用途に用いられることはない。

山西英一訳のディケンズ『大いなる遺産』(新潮文庫)を読んでいたら、そんな思い込みを打ち破る例に出会った。「琶布」と書いて、「はっぷ」と読む。文脈からすると、どうやら患部に貼る「湿布」のようなものらしい。そう言われれば、「○○ハップ」とか「ハップ○○」といったシップ剤の名前を聞いたことがある。

「ハップ」はまたの名を「パップ」ともいい、国語辞典にはこちらで載っている。そして、漢字では「巴布」と書くことになっている。それを昔は、「琶布」とも書いたのだろう。意味を生かした当て字とは思えないが、楽器とは何の関連もないところにこの漢字を用いた、そのセンスがおもしろい。
2016年10月21日 新聞掲載(第3161号)
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