「萌木の村」代表取締役社長・舩木上次さん(下)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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あの人に会いたい
2016年10月28日

「萌木の村」代表取締役社長・舩木上次さん(下)

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今年で40年目に入るホテル「ハット・ウォールデン」
「萌木の村」に、ホテル、地ビールレストラン、オルゴールミュージアムを造り、野外でのクラシックバレエ公演を毎年開催。そして今やウイスキーの収集家としても知られる舩木上次さん。「ホテルハット・ウォールデン」の中の「バー・パーチ」にはめったに出会えないウイスキーがある、とウイスキー好きに囁かれるほど。舩木さんは、誰に会いに行くにもスーパーマンのTシャツを身に着け、自分のキャラクターにしてしまっている。裏表がなく、たぶん小さなころから、目上の人に可愛がられたのだろう。清里開拓の父、ポール・ラッシュ博士を父とも慕う舩木さん。

「博士の“人を高揚させる力”を間近で見てきた。彼は地域に貢献して何も持たずに亡くなった」。ポール先生の志がいつも胸の中にあるのだろうか?「江原さん、俺がなにかしたいと思うと、必ず実現できそうなメンバーが不思議と集まってくるんだよ」

ロック再建に向けて動き出した舩木上次さん
火災で全焼したロックを再建するにつけても、萌木の村の建物に関わってきた大工さんたちが、集結してきているという。

そして今、萌木の村の大きな魅力となっているのが、ナチュラルガーデンの存在。イギリス人のガーデナー、ポール・スミザーさんの「植物はその地で咲くからこそ意味がある」という考え方をベースに、七年前からスミザーさんの指導を受け、舩木さん自ら垣に石を積み上げる日々を送ってきた。私も七年前から移り変わる庭の様子を見てきたが、九月に行った時のあまりの美しさには、本当に驚いてしまった。石を積み上げたゆったりとしたアプローチの、どこを歩いていても、植物のたくましさ、健気さを実感できる。一昨年NHKの「プロフェッショナル」でポール・スミザーさんが取り上げられたことで、萌木の村のガーデンを見たいと多くの人たちがつめかけているそうだ。

これからの舩木さんは、ここにしかない価値をさらに掘り下げ、それをきちんと見せるために、さまざまな手を尽くすという。「それには“人”しかない。スミザーさんもそうだけど。若くて金がなくてもこいつはなにか持っていると思ったら、徹底的に応援したいと思う。そういう人が育ってくれれば、清里はまだまだ伸びしろがあるすばらしい地域なんだよ」
今年で27回目を迎えた「清里フィールドバレエ」(写真・小林雅之)
これは感の鋭い舩木さんだからできる考え方で、若い時に一流のものに触れる機会を多くの先輩に作ってもらったからこそのこと。そして今度は舩木さんが、才能のある若手を育て、清里の魅力として花開く時を信じている。

昨年、主婦と生活社を退任した私は、これから萌木の村とどんな付き合いになるのだろうと思っていたが、何のことはない、さらに自由に夢を語りながら、できないこと、そしてできることを見つけていく。

来年五月に再建予定の地ビールレストラン「ロック」は、今までにも増して魅力ある場所になるだろうし、それ以外にも舩木さんの頭の中には、次なる計画がいくつも進行中らしい。 「俺はいつも金はないけど、見返りは金以外の方がずっと価値があると思っている。誰でも欲はあるけど、俺は無形な見返りに期待する。目には見えない人の思いや感動。お金以外の見返りを手に入れるという考え方を持て!とスタッフにはいつも話をしている」

ここを起点にすべてを図っていこうとする舩木さんの考え方には、ぶれがない。これは一朝一夕に出来上がるものではない。清里開拓の歴史の中で、何を目指すか、どこを見て進めばいいのか、ポール・ラッシュ博士が指し示したことを、これから舩木上次という人が担っていくのだと思う。それが彼の生きる上での使命感なのだと感じた。
2016年10月28日 新聞掲載(第3162号)
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