ボクと黒田とタイゾー|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!
▶メールマガジン登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

ともかくスケッチ
2016年10月28日

ボクと黒田とタイゾー

このエントリーをはてなブックマークに追加
黒田泰蔵くんと敢えて言わせてもらう。日常は「タイゾー」と愛を持って呼び捨てにしている。というのは、K2(我が事務所の名前)の相方・黒田征太郎(イラストレーター)の弟だからである。50年来そのように呼んでいる。鮮明に憶えている初対面は、渋谷はパルコ通りの坂の途中である。黒田とボクの間にタイゾーがいた。「お母さん元気かぁ」、「今は何してんねん」と世間話をしながら歩行中の時だった。若干18歳のタイゾーが「パリに行きますねん」と気軽に話してくれた。まだ兄貴の黒田征太郎もボクも世界に憧れていたものの実行に移せなくモヤモヤしていた頃だ。先を越されたことの悔しさを胸にしまいつつ「勇気あるなぁ」と感心したこととその一言に唖然としたことを思い出した。

先日、東京・大崎にある「光村グラフィックギャラリー」に於いて「黒田泰蔵白磁写真造本印刷」(~10月30日(日))なる彼にとって国内外何十回、何百回と展覧会を行っているが、この手の展覧会は初めてだと思われるものが開かれた。透明感のある白磁のセクシーな曲線をもつ泰蔵の作品群を端正な白黒写真に納めたOWA MASAYUKIの写真を見事な印刷術で一冊の写真集『黒田泰蔵 白磁』(求龍堂)に仕上げた過程が再現されている。黒田征太郎の弟さん、黒田泰蔵君と呼ばれていた「タイゾー」が「泰蔵先生のお兄さんはひょっとしたらイラストレーターの黒田征太郎さんですか?」と問われるようになり、今や黒田征太郎もK2のことも、まして長友とは無縁のものとなってしまった。嬉しいことだ。ボクの中ではいつまでたっても「タイゾー」だ。あまりの嬉しさに「タイゾー良え展覧会やったねぇ」と電話をしたら「ありがとうございます」と丁寧な返事が返ってきた。
2016年10月28日 新聞掲載(第3162号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
長友 啓典 氏の関連記事
ともかくスケッチのその他の記事
ともかくスケッチをもっと見る >