田原総一朗の取材ノート「ドゥテルテ氏来日 日比首脳会談」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
哲学からサブカルまで。専門家による質の高い書評が読める!

▲トップへ

  1. 読書人トップ
  2. コラム
  3. 田原総一朗の取材ノート
  4. 田原総一朗の取材ノート「ドゥテルテ氏来日 日比首脳会談」・・・
田原総一朗の取材ノート
2016年11月4日

ドゥテルテ氏来日 日比首脳会談

このエントリーをはてなブックマークに追加
一〇月二〇日、中国を訪問中だったフィリピンのドゥテルテ大統領が、中国首脳や財界人を前に「軍事的にも経済的にもアメリカと決別する」と表明し、日本とアメリカに衝撃が走った。

フィリピンとアメリカは同盟国で、当然ながら軍事的にも経済的にも密接な関係がある。
げんにフィリピンにはアメリカ軍の基地があり、少なからぬアメリカ兵が駐留しているのである。

ドゥテルテという人物は冷静さに欠け、粗野な外交音痴なのか。
実は、ドゥテルテ氏は、特に麻薬犯罪に対して非情ともいえる対応を示し、今年六月末の大統領就任から、わずか四カ月の間に(自警団による行為も含めて)三五〇〇人もの麻薬犯罪などの容疑者らを裁判にかけることなく殺害している。このことがアメリカやヨーロッパでは批判の対象になり、たとえば九月にラオスのビエンチャンでドゥテルテ、オバマ会談が予定されていたのだが、オバマ大統領が「人権的に問題だ」と懸念を表明すると、「オバマは何様のつもりだ。このクソ野郎が」などと罵声を浴びせて、首脳会談は中止になった。

さらに、アキノ政権時代に、中国が国連海洋法条約に違反している、と仲裁裁判所に訴え、「中国の領有権は認めない」とする判決を得ていた。だが、ドゥテルテ氏は、そのことを中国側に、全くいわなかった。そして中国側から、総額二兆五〇〇〇億円にのぼる支援を受けることになった。だから、経済支援を得るために「南シナ海の領有権を売ったのではないか」という見方も出ている。

もっとも彼は「仲裁裁判所の決定は明確に文章になっている。決定が消えるわけではない」ともいい、帰国後に「アメリカとの関係を絶つつもりはない」と釈明している。しかしアメリカ軍を二年以内に撤退させるといい、米比共同軍事演習はやらないとも宣言している。

そのドゥテルテ氏が来日した。日比首脳会談の安倍首相の役割は、次の二点であった。一つは「南シナ海問題は『法の支配』の下での平和的解決が必要だ」と認めさせること。もう一つは「東アジア情勢の安定化にはアメリカの存在が不可欠である」ことを理解させることだ。

この二点について突っ込んだ話し合いをするために少人数の七〇分におよぶ会談がもたれた。だが、その内容は公表されないことになった。なぜなのか。安倍首相のおもわくとは異なったのか。おおいに気になる。
2016年11月4日 新聞掲載(第3163号)
このエントリーをはてなブックマークに追加