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誰も見ていないから
2016年11月25日

誰もみていないから ㉓

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Afterimage〉(油彩、キャンバス/2014年/41×27.3cm)ⒸShinjiIhara
「東京が嫌いだ。」
学生最後の二年間を東京で過ごした。
画家になるためには一度上京したいと思っていたから、東京藝術大学の院試に合格した時はとても嬉しかった。しかし、その喜びや期待は木端微塵に砕かれてしまった。

入学早々「芸大に何をしにきたんだ。」と蔑まれ、絵を全否定される。引っ越して程なくして交通事故に遭い、病気で救急車に運ばれる。研究室の先生が亡くなり、友達も出来ず、大学に居場所が無くなる。そして、東日本大震災にあった。

厄年だから運が悪いのか、自分に何か非があるのかと自己処理しようとしても、退学するか、自殺するかしないとその悪夢のような出来事は続いて、助けてくれる人などもいなかった。

誰にも会わないように早朝に大学に行き、誰にも会わないように夜中に帰宅する毎日。楽しかったことを思い出そうとしても何も出てこない。早く東京から出たくて、卒業式が終わったその足で新幹線に飛び乗った。

しかし、その二年間があったからこそ今の私があるのだとやっと思えるようになってきた。いかなる結果も、全て自分にある。
2016年11月25日 新聞掲載(第3166号)
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