友だちでぱんぱんのバンで飲酒運転車輌専用道いけばくるぱんぱんのバン 伊舎堂仁『トントングラム』(2014)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2016年12月2日

友だちでぱんぱんのバンで飲酒運転車輌専用道いけばくるぱんぱんのバン
伊舎堂仁『トントングラム』(2014)

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三句目がとんでもない字余りになっている歌だが、ぎゅうぎゅうに人が詰め込まれたバンがモチーフになっているので、言葉選びまでぎゅうぎゅう感を出してしまったようだ。読むときに戸惑ってしまうだろうが、その戸惑いこそが正しい反応なのだ。

作者の出身地は沖縄県石垣島で、飲酒運転検挙数が全国の中でもダントツに多い沖縄の中でも特に検挙率が高い地域。この歌が入っている連作「ゎ」は「地元」を舞台にした一連らしく、街並みが均質化され、生活や文化のレベルもそれほど高くない「ごく普通の地方都市」の風景が描かれている。自動車を運転する描写がきわめて多いところに地方のリアリティがある。こういった地方都市のリアルを口語で表現する短歌は、twitterが一般化したあたりの時代から急速に増えてきた。ちなみに奇妙な連作タイトルは〈しっかりと勉強したしこれからゎ医療人としてがんばるぞ〉という一首から。「ゎ」という表記と医療人という固い語とのギャップがおかしい。

飲酒運転が常習化している風土では、普通の道路がすでに「飲酒運転車輌専用道」なのだろう。定員オーバーをしているバンで道をゆけば、対向車もやっぱり定員オーバーのバン。相手もとっくに酒が入っているのは言うまでもない。ユーモラスながらも、「地元」への絶望と諦念にあふれている歌だ。犯罪というモチーフはときに鈍麻した倫理観の表現になりえるし、鋭利な批評性を放つこともある。そんな好例である。(やまだ・わたる氏=歌人)
2016年12月2日 新聞掲載(第3167号)
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