【横尾 忠則】芸術に生活を導入する 風流なおでんの雪見|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
哲学からサブカルまで。専門家による質の高い書評が読める!
~毎週金曜日更新~

▲トップへ

  1. 読書人トップ
  2. 連載
  3. 日常の向こう側ぼくの向こう側
  4. 【横尾 忠則】芸術に生活を導入する 風流なおでんの雪見・・・
日常の向こう側ぼくの向こう側
2016年12月2日

芸術に生活を導入する 風流なおでんの雪見

このエントリーをはてなブックマークに追加
鴻巣友季子さんとアトリエで(写真・小柳学)
2016.11.21
 都心の有名百貨店が2年後に現代美術の画廊をオープン、そのコケラ落としに個展だって? 思い切って、ドカンと美術館を建てなさいよ。百貨店の画廊って如何にも売り絵って感じ。それに若手の紹介だったら、老手を相手にしないでよ。
2016.11.22
 東京新聞「この道」の連載終って、担当編集者挨拶に。この連載を単行本化する人もいるそうだが、105日書いても歯抜け状態なので、差し歯、入れ歯をしないと本にはならない。まだ死なないつもりなので、今の続きを書いてから本にしましょう。

台所にやってくるのは先住民のホームレス猫だけだったが今日は黒ツボ、ドッテンパーコとその新生児揃って三匹来訪。わが家にはまだ難民受け入れ対策もないので玄関の托鉢用のエサをどうぞ。
2016.11.23
 木枯2号だって。そーいえばトッパン印刷の木枯さんが亡くなって50年はたつよな。

インテリアデザイナーの内田繁さん死去。倉俣史朗さんはうんと早かったけど74歳の内田さんだって早いよね。倉俣さんとはザ・リッツ台北のアラブレストラン、内田さんとは博多のジャズクラブの店内装飾をコラボ。二人共南方浄土へ旅立ってしまった。

今日は勤労感謝の日。老齢になっても働けるアリガタ味を感謝しなきゃ。そこで新作シリーズ3点目に挑戦。従来のスタイルを放棄。とはいうもののスタイルのないスタイルがアタシのスタイル! それだけにいつも難行苦行。背後から追ってくる魑魅魍魎共に捕まる瞬間に二河白道の橋に一歩をかけるが、火と水の二河に挟まれた一条の白道をよろめきながら渡ろうとするこの恐怖の快感の先に阿弥陀仏だか、ベアトリーチェが手を差しのべてくれることを信じているからこそやってまんねん。
2016.11.24
 現実のような夢、夢のような現実、いちいち「これは夢です、これは現実です」なんて断ることに意味がどれほどあろうか。意識と無意識は分け難く絡まっている。日常の中に芸術を見出す、そして芸術の中に生活を導入する。もう分離された現実が夢や異境やといっているそんな領域に生きてまへん私。次期米国大統領と同姓のトランプと名乗る男が、ベルリンの国際展に出品の要請にドゴール空港から帰国の途に発とうとしている時にやゝこしい話を持ってくる。何かあったら連絡しろと電話番号を手渡される。何かあったら、と言うが「これが何かだよ」とわしゃ怒る。

窓の外から雪の情景を形容する歌舞伎の太鼓の音が聞こえる。おでんが目を点にしてこの異景を窓の敷居に手を掛けて躰を乗り出して観賞する姿は風流だ。庭の落葉に雪が絡んで美醜の区別がつかないまま箱庭的風景を見せてくれている。
2016.11.25
 10時半アトリエに行くと松竹の人達が沢山いる。「何しに?」と聞いたら「家族はつらいよ2」のポスターとタイトルバックの校正のチェックだって。「すっかり忘れていましたよ」。両方で「ウワッハッハッハッ」。

鴻巣友季子さんと「翻訳問答」の対談。「すばる」掲載後鴻巣さんの対談集に収録。ボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞の揚げ足を取りながら、あゝでもない、こうでもないと結構、言霊の高みへと連れ去られていく。つまり個人から個という普遍性、そして人から神人的世界へと。胃の中では小鯛焼とチョコのコラボ。

イタリアの著名キュレイター、フランチェスコ・ボナミさんより、あるイタリアのファッションブランドがコラボを希望しておりビジュアルイメージのコミッションを主体に展覧会や本の出版も。このところ海外のオファーが続く。海外の仕事は未来からの発注って感じ。
2016.11.26
 三省堂成城店が大々的に配置を変えてしまった。そのせいか客足が減ってしまった。マンガが洪水のように押し寄せてきて、一般書籍が細分化してその所在が不明。イチロー本二冊、道元を一冊、両者とも「道」の本だ。
2016.11.27
 深夜にまたおでんが子ネズミを獲って来て、バレーバールのように子ネズミをトスして遊ぶ。ドタバタうるさく眠れず、自著『死なないつもり』を読み出したら面白くなって(笑)また眠れず。

山田さんがわが家の外壁ペインティングを見に来られる。本当は長いアプローチに玉砂利を敷いて、鳥居を立てると、赤とピンクと白と金でそのまま神社になるところだ。神社や城を建てるわけにはいかないので、せめてペインティングで変化を愉しむ。この道楽は魔除けにもなるぞ。

散歩中の磯﨑さんも「だったら見に行っていいですか」とわが家に向う。彼の文学に影響を与えればきっとクレージーになるだろう。その前に一番影響を受けるのはこの俺だけれどね。
2016年12月2日 新聞掲載(第3167号)
このエントリーをはてなブックマークに追加