田原総一朗の取材ノート「グローバリズムの矛盾」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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田原総一朗の取材ノート
2016年12月2日

グローバリズムの矛盾

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新たにアメリカの大統領になるドナルド・トランプは、選挙期間中、「アメリカは世界の警察をやめる」と宣言していた。

アメリカは世界の警察をやっているから、莫大な費用がかかり、兵士たちの犠牲も多い。だからアメリカの利益第一主義でいく、というのである。

そこで、私はトランプは「軍縮」かと思ったら、逆に「軍拡」なのである。
トランプ政権の主要人物は、イスラム強硬派ばかりが並んでいる。そしてトランプは力による平和を打ち立てるのだと強調している。

オバマ大統領は、それほど成果はあがらなかったが、軍縮政策であった。だから、シリアのアサド政権側が、国連が禁止している化学兵器を使ったとき、オバマはアサド政権を攻撃すると宣言しながら、攻撃せず、結局ロシアのプーチンに名を成さしめた。シリア問題でもイスラム国問題でも、さらに中国の南シナ海問題でも主導権が取れていない。

トランプは、オバマの政策は中途半端で、アメリカが世界から信用を失いつつあると危機感をつのらせているのである。

そこで、ふたたび偉大なアメリカにするのだという。しかし、そのためには、まずグローバリズムの矛盾で苦しんでいるアメリカ人たちが満足な生活が出来るようにしなければならないし、錆びた工場地帯に、工場を取り戻さなければならない。だが、これは容易なことではない。

ロシアも中国もそうだが、経済が不振な国のリーダーたちは、いわゆる力の外交にシフトしている。トルコのエルドアン、フィリピンのドゥテルテ、そしてトランプも含めて、いま目立っているリーダーたちは、いずれもデモクラシーとは対極にいる人物たちである。

少し前に、イギリスがEUから離脱したとき、私が取材した政治家や学者、ジャーナリストたちは、いずれも残留だと答えた。だが多くのイギリス人たちはEUの理想に耐えられなかったのである。ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に動くのがグローバリズムなのだが、多くのアメリカ人がそれに耐えられなかったように、多くの国の国民がデモクラシーを守るゆとりと展望をなくしているということなのだろうか。(たはら・そういちろう氏=ドキュメンタリー作家)
2016年12月2日 新聞掲載(第3167号)
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