第70回 毎日出版文化賞 贈賞式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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受賞
2016年12月9日

第70回 毎日出版文化賞 贈賞式開催

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虚人の星(島田 雅彦)講談社
虚人の星
島田 雅彦
講談社
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11月25日、ホテル椿山荘東京にて第70回毎日出版文化賞の贈賞式が開催された。文学・芸術部門は島田雅彦著『虚人の星』(講談社)、人文・社会部門は塩出浩之著『越境者の政治史 アジア太平洋における日本人の移民と植民』(名古屋大学出版会)、自然科学部門は佐藤恵子著『ヘッケルと進化の夢一元論、エコロジー、系統樹』(工作舎)、企画部門は五味文彦、本郷和人、西田友広、遠藤珠紀、杉山巖編『現代語訳 吾妻鏡』全巻17冊(吉川弘文館)の4部門から選ばれた。また第15回毎日出版文化賞書評賞は荒川洋治著『過去をもつ人』(みすず書房)が選出された。当日は受賞者ならびに受賞作刊行出版社が表彰された。

毎日出版文化賞の選考評は選考委員を代表して鷲田清一氏が述べた。受賞4部門の作品は2つの世界の境目、あるいは隙間に焦点が定めているという意味で「みんな際どかったな」という印象を受けたと述べ、受賞作それぞれの「際どさ」についてコメントした。

文学・芸術部門受賞の島田雅彦氏は「今回も政治的に際どいことを書きましたが、それよって一部から批判も受けました。しかし今回の受賞により文化の向上に貢献しているとみなされて評価をいただいたということは千人の援軍を得た思いがします」と昨今の政治状況に対して警鐘を交えつつコメントした。

人文・社会部門受賞の塩出浩之氏は、「いただいた選評で私の研究が従来の政治史研究をひっくり返すような書だと評価してくだいましたが、私の研究を正面から受け止めてくださったのだと感じ、本当に感激しております」と喜びを語った。
受賞者前列左から荒川洋治氏、佐藤恵子氏、塩出浩之氏、島田雅彦氏、五味文彦氏と受賞出版社代表者


自然科学部門受賞の佐藤恵子氏は「日本におけるヘッケルのイメージを一次文献を通して立体的な人物像にまとめることが研究の醍醐味になり、多くの人に客観的なかたちで知ってもらいたい気持ちが出版にいたる原動力になりました」と刊行までの道程にふれた。

企画部門は編者を代表して五味文彦氏がコメントを述べた。「歴史研究という枠組み以外に考古学、美術史、文学史そのほかさまざまなジャンルの研究者や一般の読者にとっても日本の歴史の中で重要な役割を持つ『吾妻鏡』の現代語訳は有益だろうと考えました」と今回の訳業の意義を話した。

毎日出版文化賞書評賞の選考評は選考委員を代表して池澤夏樹氏が述べた。選書の確かさと静かな語り口からひたひたと迫る文章は書評の王道を往く書評であると受賞作を評した。

過去をもつ人(荒川 洋治)みすず書房
過去をもつ人
荒川 洋治
みすず書房
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書評賞受賞の荒川洋治氏は「一人の人間が一つの本に向き合って何かを書いているということがこの本を読み返して見えました。そして僕も書評家になったのだなと感じるようになりました」と語った。




式の終盤、受賞出版社を代表して吉川弘文館社長の吉川道郎氏が受賞の栄誉の歓びを分かち合いたいと述べ、さらに「『現代語訳 吾妻鏡』完結に際して若い研究者、学生、歴史に興味ある方に広く鎌倉時代を通しで理解し楽しんでいただきたいです」と語った。
2016年12月9日 新聞掲載(第3168号)
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