【横尾 忠則】同級生とセレモニー 全員80歳。全員元気。全員隠居。全員 白髪。全員楽天家。全員妻帯。全員西脇弁|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2016年12月23日

同級生とセレモニー 全員80歳。全員元気。全員隠居。全員 白髪。全員楽天家。全員妻帯。全員西脇弁

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横尾忠則現代美術館にて兵庫県知事井戸敏三さんと(撮影・徳永明美)
2016.12.12
 凸版印刷の富岡さんと金子さん来訪。大阪万博のせんい館のパビリオンのマケット(模型)を制作してもらうことになっている。金子さんはせんい館に大変興味を持ってくれていて、関係者以外には入手できないせんい館の資料など所蔵。来秋、ポンピドゥー・センターの建築展にせんい館のポスターや、その他資料の展示計画などがあり、この際、マケットを制作しておこうと思う。また金子さんから1976年に招待されたヴェネツィア・ビエンナーレ5人のデザイナー展のカタログの寄贈を受ける。このカタログは恐らく日本の美術関係者は誰も持っていない非常に貴重な資料である。

近著『ヨコオ・マニアリスム』が20日も前に出版されているにもかかわらず著者のぼくには届かない。今までの経験でこんなことは初めて。あきれるというか、実に無責任、非礼極まりない出版社だ。本書に執筆してもらった平野啓一郎さんにこのことを話すと、「こんな話聞いたことがない」と驚く。

2016.12.13
 おでんの奴め、また深夜に子ネズミと布団の上ででんぐり返って戯れる。目は覚めるは、気味悪いはこれこそ現実の悪夢なり。

イッセイ・ミヤケの来秋冬のパリコレの招待状の打合せ。テーマはオーロラ。オーロラはかつて機内から4時間見つづけたことがある。オーロラを見る以前からオーロラの絵を描いていたので、その絵を活用しよう。

お歳暮の季節になると色んなものが届く。大半が食料品だが、中にはウーン? というのもあるけれど、善意から送られたものだ。文句など言っちゃ運気を逃がしてしまうよ、と誰かが言ったのを思い出した。感謝、感激、感動。

「菜根譚」を読んでいたら、フト躰の修養も必要に気づき、マッサージへ。

2016.12.14
 京都のどこかの料亭に60年代の前衛芸術家が集まっている。そこにゲストで都はるみが来ることになっている。遅れて浅丘ルリ子と吉永小百合も合流するという。宴会は別の場所で開かれるというのでどやどやと一斉に玄関へ。ぼくの靴だけがない。中居さんが「買いに行きます」といってコンビニに走る。ぼくの靴はイタリアで買ったものだからコンビニにはないんですけどね。

久し振りの雨。雨の日に歩くのは嫌いではない。長靴が履けるから嬉しい。ナントカという雑誌(思い出せない)の取材。『死なないつもり』の取材はすでに十誌を越えている。

夕方まで制作。あゝでもない、こうでもないと筆も気持も揺れながら描いているが絵の最終着地は見えない。昔「君の絵はアートになってない」とよく言われたことがあるが、今も変らず如何にアートをはずすかに全身全霊戯れています。

眠れない夜はヒルティや睡眠薬より「菜根譚」の方がよく効く。

2016.12.15
 一晩中知らない人とズッと一緒だったがお互いに名も名乗らず別れる。

岐阜新聞の80年代の回想取材。80年代は画家転向をして何かと世界中を駆け廻っていたような気がする。来秋に日比野克彦館長の岐阜県美術館で開催される80年展の前哨取材なのかな?

夕方まで制作。どうなるかと思っていたけれどなんとか筋が見えて来た。問題解決の道は何通りもある。どれを選んでも自分の絵だ。

夕方、明日神戸に行くのでシャンプーに。

2016.12.16
 英の車で妻、徳永と新横浜駅へ。

午後より横尾現代美術館の館長初め十数名出席による綜合会議を。会議が終って「ようこそ!横尾温泉郷」展の記者会見。恒例の井戸知事によるオープニングセレモニーで詠まれる祝詞は「縦横に谷尾根尋ねて、秘境まで温泉の源に夢を馳せたる」なり。

今回も西脇から同級生10数名大挙して。全員80歳。全員元気。全員隠居。全員白髪。全員楽天家。全員妻帯。全員西脇弁。

夕食は東天閣の中華。いつも蓑館長のおしゃべりで静かな晩餐だが今日は館長上京のため欠席。こんなやかましい夕食会はかって一度もなかった。横尾忠則現代美術館がフランスのミシュラン・グリーンガイドによってひとつ★に指定決定で祝杯。国立西洋美術館の★ひとつと同格、と大いに盛り上る。

ホテルオークラで大阪からきた定本君と西脇の民岡君(共に同級生)と10時半頃まで話す。二人共当ホテルに宿泊。

2016.12.17
 ホテルで定本君、民岡君と朝食のあと別れて帰京。

昨日ひとりで留守番のおでん、「帰って来た!」と大喜び。だけどほったらかしにされた腹いせのせいか放尿の匂いがする。2時間ばかりアトリエで制作。

2016.12.18
 殺伐とした世の中になった。どこからともなく戦争の足音が聞こえ、町にあふれるポスターは戦意高揚ものばかり。未来からやってきた予知夢でなきゃいいが。

昨日、神戸から瀬戸内さんに電話するが連絡つかず、今日電話あり。いつも同じ言葉「もうこんなに長生きしたくないわよ」。生きたい生きたいと思わないのが最高!
2016年12月23日 新聞掲載(第3170号)
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