角川三賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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受賞
2017年1月6日

角川三賞 贈呈式開催

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十二月六日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで第38回角川源義賞、第14回角川財団学芸賞、第3回城山三郎賞の贈呈式が行われた。角川源義賞は文学研究部門に川平敏文著『徒然草の十七世紀 近世文芸思潮の形成』(岩波書店)











歴史研究部門に塩出浩之著『越境者の政治史 アジア太平洋における日本人の移民と植民』(名古屋大学出版会)、角川財団学芸賞に山本聡美著『九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史』(KADOKAWA)、城山三郎賞に辺見庸著『増補版 1★9★3★7』(河出書房新社)、北野慶著『亡国記』(現代書館)がそれぞれ選ばれた。
前列右から山本聡美、塩出浩之、川平敏文、角川歴彦、辺見庸、北野慶の各氏。後列はそれぞれの選考委員。



辺見庸氏の受賞の言葉を一部紹介する。辺見氏は「この本を書いていてずっと頭に中にあったのは同心円の構図です。時間という歴史的な同心円、波紋のような同心円の構図です。もう一つはいかがわしいことといかがわしくないことの区別が無くなったということです。これは精査すればするほど自分が傷つき、物が書きにくくなり、絶えず僕自身も苦しめられてきました」と語り、著書に引用した武田泰淳の「汝の母を!」にある農民の母子に日本兵が性交を強いる場面に触れながら、「私の想念の中にある同心円の中心には、母親と息子に性交を強いる日本軍の兵士の群れ、そこに私の父親を置いて考えてみたんです。





亡国記(北野 慶)現代書館
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そのフォルムから私は逃れられない。その同心円の広がりの中に私たちの今があると思っているわけです。この小説は僕にとっては極めて内面的で衝撃的なもので整理のつかないものです。皆さんは、武田泰淳はこの風景をもって何かを告発しているのではないかと思うかもしれません。私も半分くらいはそう思います。しかし私は武田泰淳はもっと悪魔的な人間ではないかと想定していまして、触るに触れられない絶対的な風景を持ち込んできた。この短編については、開高健でさえ論評できないと放り投げている。それくらいこの構図は耐え難いので文芸批評を放棄してしまうんです。では文芸批評にどんな意味があるのかと、私は思う。文芸批評だけではなく、言説の世界、思想の世界にこれについて論評できなければ何の意味があるのか。戦後七〇年以上過ぎた現在も、その同心円が広がりつつある。



この会場にもその同心円が広がってきている。我々はその同心円の中から脱することが全く出来ないでいると私は思うんです。それを無いかのようにして、日常、秩序を作っている。私は教訓めかして、当時を点検した方がいいと言いたく書いたわけではない。自分が兵隊の輪の中にいたらどうしたのか。私の父親は同じような場所にいたんです。同心円を形づくった一人であるわけです。その同心円から我々が完全に脱して、一九三七年からの八〇年を迎えようとしているのか、私は違うと思います。

言説、小説の世界、思想・哲学の世界も私から見ると収縮していると言わざるを得ない」と静かに怒り、「現在はスルーすることをテクニックとして覚えている。したがって、際どい部分、危ない部分はスルーして、こういう同心円の中で秩序正しくとお礼を述べるのが正しいという風になってします。でもどこかがいかがわしい。いかがわしいことといかがわしくないことが混濁して境目が見えなくなってきたところにトランプが登場して今の欧州があり、今のアジアがあると思っています」と辺見氏ならでは舌鋒鋭く受賞の言葉を述べた。
2017年1月6日 新聞掲載(第3171号)
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この記事の中でご紹介した本
増補版 1★9★3★7/河出書房新社
増補版 1★9★3★7
著 者:辺見 庸
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
亡国記/現代書館
亡国記
著 者:北野 慶
出版社:現代書館
以下のオンライン書店でご購入できます
九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史/KADOKAWA
九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史
著 者:山本 聡美
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
徒然草の十七世紀 近世文芸思潮の形成/岩波書店
徒然草の十七世紀 近世文芸思潮の形成
著 者:川平 敏文
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
越境者の政治史 アジア太平洋における日本人の移民と植民/名古屋大学出版会
越境者の政治史 アジア太平洋における日本人の移民と植民
著 者:塩出 浩之
出版社:名古屋大学出版会
以下のオンライン書店でご購入できます
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