手にしなければこの不思議な一冊の魅力は味わえない リチャード・マグワイア著 HERE|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
哲学からサブカルまで。専門家による質の高い書評が読める!

▲トップへ

  1. 読書人トップ
  2. コラム
  3. 新刊
  4. 手にしなければこの不思議な一冊の魅力は味わえない リチャード・マグワイア著 HERE・・・
新刊
2016年12月9日

手にしなければこの不思議な一冊の魅力は味わえない リチャード・マグワイア著 HERE

このエントリーをはてなブックマークに追加
見開き頁に窓と作り付けの暖炉のある部屋の一角が描かれている。頁の左上には2014という数字。さらに繰ると窓と暖炉の位置はそのままに、壁紙が貼られた部屋には家具が配置されている。

数字は1957。頁を繰り進めていくにつれ、ランダムに数字が変わりその場所のあり様も変わる。読者はその数字が年代を表し、この場所の定点観測を強いられることに気づく。

本書には紀元前30億50万年から22175年といった様々な年代の同じ空間の断片が共存して描かれる。読者は頁を行きつ戻りつしながら登場人物の物語を自らの手で紡ごうと試みることだろう。

ある家族の物語と場所の記憶が交錯する。読後には自分が今いる場所の数年前、数百年前、あるいはそれ以前の「here」への壮大な空想に思い巡らすことになる。実際に手にしなければこの不思議な一冊の魅力は味わえない。
2016年12月9日 新聞掲載(第3168号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事の中でご紹介した本